ープルルルップルルルッ
夜、いつものようにベッドの上で柊真に電話をかける。
…あれ、出ない。
唐突すぎたかな?
いつもはLINEしてるときにどっちかが【かけるよー】って言ってから電話が始まる。
でも今日は突然かけちゃった。
だって、私がお昼に【部活?】って送信したっきり、既読がつかないんだもん。
プルルルップルルルッ。
何回かコール音がしたあと、《もしもし》という声が聞こえてきた。
「あ、もしもし?」
《…どーした?》
どうしたって…全然既読つかないから!
って、あれ…?
なんか、声が…。
電話だからかな?
「ねぇ、柊真、声変じゃない?」
いつもより嗄れた声。
《あー…風邪引いた。》
「えっ?」
《てか、熱ある。》
「ええっ!?」
熱!?
「ウソッ、え、電話かけちゃってごめんっ!」
そう思えばダルそうな声。
コホンッと咳までしてる。
《大丈夫。
ってか、今日一緒に帰れなくてごめん。》
「いやいやいやいやっ!
それどころじゃないからっ!」
熱なら先に言っといてよ〜っ。
昨日電話した時は元気だったのに…。
返信がなかったのも、ずっと寝込んでたからってわけね。
「じゃぁ、切るよ?」
《え、もう?》
ん?
「いや、寝なきゃダメだからね?」
びっくりしたぁ…
まだ話す気でいたの?
…いや、嬉しいけどさ。
《分かった。》
「ふふっ、おやすみ。」
《おやすみ。》
ツーッツーッと不通音が響く。
そっか…。
柊真、風邪ひいてたんだ…。
大丈夫かな?
スマホを枕元に投げて、そのまま倒れ込む。
「はぁ…」
もしかして、クリスマスデートできないとか…ないよね?
いや、まさか。
だってまだ火曜日。
日曜日までにはさすがに治ってるでしょ〜…。
ねぇ?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!