「はぁっ…はぁっ…」
うぅー、キツい。
上り坂に入り、歩調を緩める。
ヤバい、人生初の遅刻しそう!
「…よしっ!」
私はそう意気込んで、リュックのショルダーベルトをギュッと握り、また走り出す。
昨日の夜、柊真のことが気になりすぎてなかなか寝付けなかったせいだ〜っ!
スマホの時計を確認すると、8時28分。
げ、ショートホームルーム始まってるよ…。
てかもう終わるとこじゃんっ。
ま、1時間目にはなんとか間に合いそう。
私の学校は8時20分からホームルーム、40分から1時間目が始まる。
1時間目なんだっけ…
あ、化学…。
ってことは理科講義室…。
教室移動しなきゃじゃん!
やば、そうとなればもっと早く行かないと…
そう思った私はスピードを上げる。
教室に教科書取りに行ってー、それから…
「はぁっ、はぁっ」
「あ、はよっ、あなた。
遅刻ーっ」
教室に入ろうとすると扉の前で雄太とすれ違い、笑いながらそう言われた。
「おはよっ!
いや、まだあと5分ある!」
時計を指差す。
8時35分!
よかった〜…。
「おはよー、あなた」
「あ、おはようっ」
ロッカーから教科書とノートを出していると、後ろから小沼三葉(こぬまみつば)が私の肩を叩いた。
「ね、一緒に行こー」
「うんっ」
三葉はクラスの中で仲良いグループの1人。
小中学校が同じで、クラスも小3、4年以外は全部一緒だった。
歩く度に揺れる黒く艷めく長い髪。
150cmもない身長に華奢な体つき。
丸メガネが似合う顔立ち。
あーもう、三葉かわいいっ。
1年のミスコン第2位。
極度の人見知りが玉に瑕…。
「どーしたの?
あなたが遅刻なんて珍しいね。」
ぐ…。
もー、雄太も三葉も…
遅刻してないから!
ショートには間に合わなかったけど…
「昨日遅くまで起きてたら朝起きれなかった〜…」
急ぎ足で理科講義室に向かうと、入った瞬間にチャイムが鳴った。
…ギリギリセーフ。
化学の席は一番後ろ。
右は雄太、反対側は壁。
柊真、まだ熱が下がってないみたい。
起きた時にLINEが来てた。
あ、そーいえば返信してなかったな…。
でももう授業始まっちゃったし、後ででいっかー。
ふぁぁぁ。
大きくあくびをする。
眠っ。
「ふっ、色気のねーあくびっ…」
隣の雄太がそう言って微笑した。
「う、うるさいなぁっ。」
慌てて口を押さえる。
もー、こっちは眠いんですよっ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。