第14話

遅刻?
926
2017/12/08 11:21
「はぁっ…はぁっ…」


うぅー、キツい。


上り坂に入り、歩調を緩める。


ヤバい、人生初の遅刻しそう!


「…よしっ!」


私はそう意気込んで、リュックのショルダーベルトをギュッと握り、また走り出す。


昨日の夜、柊真のことが気になりすぎてなかなか寝付けなかったせいだ〜っ!


スマホの時計を確認すると、8時28分。


げ、ショートホームルーム始まってるよ…。


てかもう終わるとこじゃんっ。


ま、1時間目にはなんとか間に合いそう。


私の学校は8時20分からホームルーム、40分から1時間目が始まる。


1時間目なんだっけ…


あ、化学…。


ってことは理科講義室…。


教室移動しなきゃじゃん!


やば、そうとなればもっと早く行かないと…


そう思った私はスピードを上げる。


教室に教科書取りに行ってー、それから…


「はぁっ、はぁっ」





「あ、はよっ、あなた。

遅刻ーっ」


教室に入ろうとすると扉の前で雄太とすれ違い、笑いながらそう言われた。


「おはよっ!

いや、まだあと5分ある!」


時計を指差す。


8時35分!


よかった〜…。


「おはよー、あなた」


「あ、おはようっ」


ロッカーから教科書とノートを出していると、後ろから小沼三葉(こぬまみつば)が私の肩を叩いた。


「ね、一緒に行こー」


「うんっ」


三葉はクラスの中で仲良いグループの1人。


小中学校が同じで、クラスも小3、4年以外は全部一緒だった。


歩く度に揺れる黒く艷めく長い髪。


150cmもない身長に華奢な体つき。


丸メガネが似合う顔立ち。


あーもう、三葉かわいいっ。


1年のミスコン第2位。


極度の人見知りが玉に瑕…。


「どーしたの?

あなたが遅刻なんて珍しいね。」


ぐ…。


もー、雄太も三葉も…


遅刻してないから!


ショートには間に合わなかったけど…


「昨日遅くまで起きてたら朝起きれなかった〜…」


急ぎ足で理科講義室に向かうと、入った瞬間にチャイムが鳴った。


…ギリギリセーフ。


化学の席は一番後ろ。


右は雄太、反対側は壁。


柊真、まだ熱が下がってないみたい。


起きた時にLINEが来てた。


あ、そーいえば返信してなかったな…。


でももう授業始まっちゃったし、後ででいっかー。


ふぁぁぁ。


大きくあくびをする。


眠っ。


「ふっ、色気のねーあくびっ…」


隣の雄太がそう言って微笑した。


「う、うるさいなぁっ。」


慌てて口を押さえる。


もー、こっちは眠いんですよっ。

プリ小説オーディオドラマ