「やっほ。」
手を振って近づく。
「お、来た。」
「あ、待ちましたかね??」
「んまぁ見てのとおり、あなたが一番最後ですが。」
ベンチと化された噴水の縁に座っているメンバーを見ると、確かに言われたとおり、私が最後のようだった。
「あーもー、ごめんって!
部活がちょーっと長引いてご飯食べて…ってやってたら…」
「まぁまぁ、いいじゃん。
遅れたって言っても5分だし。」
「そんじゃ、とりあえず行きますかー。」
12月23日1時30分駅待ち合わせ。
駅に到着したのはスマホで確認すると1時35分。
ちょっとだけ、遅刻しました。
「ていうか、思ったんだけど変なメンバー。」
スーパーへの道を歩きながら言う。
「まぁ、買い出しっていえば俺一人じゃ無理だし、学級長の美沙、副の渚翔に一応付き合ってもらってるわけよ。」
「私は!!」
「ん?
あなたは返事が遅れた罰。」
「は!!?」
な、なんだって…。
まぁ、申し訳ないと思ってるけどさ!!
明日のクリスマス会に向けた買い出しのため、雄太に招集された私たち。
柳瀬美沙(やなせみさ)、和田渚翔(わだなおと)、そして私。
「でも、びっくりした。
あなたがまさかコッチに来るなんて思わなかった。」
ギクッ。
美沙にそう言われ焦る。
「あー、彼氏がデートキャンセルしたらしいよ。」
雄太が頭の後ろで手を組みながら呑気な声で言った。
「ちょ、ゆーたぁっ!!」
昨日、クリスマスに行くか行かないかの話のあと、雄太に柊真の愚痴を思いっきりぶつけちゃったんだよね〜…
雄太が親身になって聞いてくれるからつい…
まぁ、そのお陰でストレス発散にはなったんだけど、その代わり、デートを断られたという事実を知られてしまったわけでして…
「え、マジ!?
クリスマスデート断る彼氏ってなんなの!?」
美沙が驚き叫ぶ。
「ちょ、美沙声大きいっ!
悲しくなるから言わないでよ〜…」
また気持ちぶり返してきちゃうじゃーん…。
「あ、ごめんごめんっ。」
「ま、良かったじゃん?
遊ぶ約束があって、寂しくねーだろ?
やっべ、クリスマス会企画したオレってヒーローじゃんっ」
「…はぁ、そーやって自分で言っちゃうとこがな〜…」
ドヤ顔で言う雄太にツッコミを入れる。
「ん?
なんか言った??」
「なーんも。」
私がそう言うと、雄太はにっと笑って鼻歌を歌い始めた。
もー、調子いいんだから。
まぁ、雄太には感謝してるんだけどね…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!