【なぁ、あなた。】
【オレたち、別れませんか】
…私の予想は、当たっていた。
1月29日の朝5時半、目が覚めると、柊真からLINEが来ていた。
…。
朝からこんなの最悪…。
私の心は曇った。
【なんで?】
一応、理由を聞いてみたい。
私はそう送信して、家を出た。
5時に起きた時よりもなぜか家を出るのが早い。
空を見上げると私とは裏腹に雲一つない晴空。
「はぁ…。」
ブブッ。
私のスマホが振動する。
立ち止まってスマホを見る。
「え。」
柊真。
…いつもは遅いくせに。
【なんか、オレらって合わなくない?
だから、別れた方がお互いのためだと思う。】
んまぁ、ごもっとも。
【うん、だね。
今までありがとう。】
手早にそう打って送信する。
柊真と私の終わり方は、こんなふうに案外あっさりとしたものだった。
私、もっとねちっこく“別れないで!”ってせがむかと思ってた。
自分でも驚いてる。
こんなふうに割り切れるのは、私の心の中の柊真の存在が薄れていっているからかもしれない。
それに、雄太が…
私の心に、雄太がいるから。
私は学校まで走った。
「はぁっ、はぁっ…」
急いで下駄箱で靴を履き替える。
「…あれ、あなた…?」
そのとき、名前を呼ばれて扉の方を向く。
そこにいたのは…
「…雄太。」
「おはよ。
…って今までで一番早くね?」
雄太がスマホの画面で時間を確認する。
「まだ7時半じゃん。」
そのとき、私の目から涙が零れた。
雄太を見て、涙が溢れた。
強がってた私の心が溶けたみたいに。
なんで、なんでだろう。
雄太を眼の前にしたら、安心した。
…やっぱり、振られたのは辛かったんだ。
私、ちゃんと柊真が好きだった。
だからこんなに悲しいんだ。
「ど、どーしたっ!?」
雄太が慌てて私に駆け寄る。
「うっ…ふぇっ…」
しゃくりを上げながら泣く私に、雄太が心配そうな顔を見せる。
「…っうっ…振られたの…私っ…。」
柊真…っ。
好きだったよ。
大好きだったよ。
辛いよ、私。
胸が痛いよ。
雄太がそっと頭を優しく撫でてくれる。
そしてぎゅっと抱きしめられた。
都合のいいことに、周りには誰もいない。
雄太の優しさが愛しい。
雄太、今だけはあなたの存在に甘えさせてください…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!