目を開けると、そこには何もいなかった。
殺風景なビルの屋上に私が1人
ポツンと取り残された。
そっと頬に触れてみると
まだ死神の冷たい唇の感触が残っていた。
自殺しようなんてことはすっかり忘れ、
首をかしげながら1人家に帰った。
私が驚いたのは手紙の差出人だ。
あれは夢じゃなかったんだ。
この手紙はなんだろう。
まさか本当にラブレター...
いや、きっと誰かのいたずらだ。
中身は不幸の手紙か何かに違いない。
母の謎の組み合わせのご飯を食べ終え、
自分の部屋に戻り手紙を開けた。
嫌な予感は当たっていた。
手紙は熱烈なラブレターだった。
...死神からの。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!