私はあの日と同じビルに行った。
でも今日は、鍵が掛かっていて
屋上に上がれない。
おかしい。ここのビルには管理人すら
居ないというのに、誰が鍵をしめた?
...トントン
突然肩を叩かれ、思わず持っていた
ハサミを振り回す。
取り敢えずハサミを振り回すのをやめる。
私の肩を叩いたのは知らないおじさん。
尻餅をついて唖然として私を見上げている。
憤然としているおじさん。
この人は誰だろう。
はぁ...はぁ......
息を整える。
渋々戻る。
どうも私にはムカつくと人にハサミを
突き付ける癖があるようだ。
あいつだ。
面倒臭いけど、とりあえず
あいつを締め上げよう。
うん。そうしよう。
私は固く決意しておじさんを後にした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。