第12話

言われてない
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2019/03/19 20:21
牙河羅
牙河羅
あ゙ーーーー!!!
週末は終わり、また学校。今学期も遂に、ラストの週に入った。
みんなウハウハやってる中、オレは一人頭を抱えていた。
カイちゃん
カイちゃん
おやおや、フラれたのかい?
虎愛
虎愛
そんなキラキラした笑顔と口調と体制で言っても、カイちゃんであることは変わらない。なんと悲しいことか…
カイちゃん
カイちゃん
うるせえ
虎愛
虎愛
俺ダチだから俺だけでいいの、そんなこと言うのは
カイちゃん
カイちゃん
先生もタチだけどダチだからいいの
いつもなら、一緒になってカイちゃんをいじってる。でも今は、それどころじゃない…。
カイちゃん
カイちゃん
で、どったのよ
牙河羅
牙河羅
…あいつが、わからね
顎を机に付けて言う。
目の前の二人はキョトンとしてた。
虎愛
虎愛
え、どゆこと?
牙河羅
牙河羅
いや、オレが馬鹿みてえなのよ
カイちゃん
カイちゃん
馬鹿じゃん
牙河羅
牙河羅
…はぁ
オレは呆れて、ため息しかできなかった。
あの後、オレらは腰を下ろし、少し話をした。
牙河羅
牙河羅
敬語ナシな
あなた

わかりま…。わかった

牙河羅
牙河羅
おう
あなた

でも、なんで私なの?

牙河羅
牙河羅
なんで、か…
あなたはとても自信なさそうに言って、オレは少し驚いた。
なぜあなたなのか。「可愛いから」…なんて言葉は、すぐ出てこなかった。たしかに可愛いが…。
牙河羅
牙河羅
なんでだろうな。ただ、そこらの女とは、ちげえ感じがした
あなた

どういうこと?

牙河羅
牙河羅
…海を見つめるお前を見て、『綺麗だ』って思ったからだ
あの時のことを、脳裏に描き起こす。その時に見た景色は、影までハッキリと覚えていた。
牙河羅
牙河羅
オレ見ても驚かねえし、ヤンキー相手に肝据わってるし、普通の女なら逃げそうなのに、平然としてるしな
あなた

うっ…

牙河羅
牙河羅
でもな、そんな強そうなお前を、なぜか『守りたい』って思った
強い奴ほど、弱いものはない。自分が弱いから、強くなる。普通の話だ。
それはたぶん、オレが一番わかってる。
こんな世界で生きてけば、自然と色んなものが染み付いてくるんだわ。
あなた

そっか…

牙河羅
牙河羅
ん?
するとあなたは、いきなり立ち上がって「じゃあね」と言って、歩いていった。
その声は妙に暗く感じた。
何か気に障るようなこと言ったか?もしかして、気持ち悪かったか?
そんな疑問が浮かぶ中、今更オレは気がついた。
牙河羅
牙河羅
『好き』って、言われてない…

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