第16話

プレゼント
754
2018/01/28 00:38
ゲーセン。戦闘系から音ゲーまで揃っている場所だが、実際オレは、ゾンビシューターにしかやったことがなかった。
そう、なかったんだ…今日までは。
あなた

UFOキャッチャーやったことない人がいたとはね

牙河羅
牙河羅
うっせえ…
手に持った可愛げのあるライオンのぬいぐるみを、赤くなった顔に押し付ける。
これはさっき、そのユーフォーなんだかで取ったやつ。…オレが。
あなた

でも、そんなの一発で取れちゃう人初めて見た

牙河羅
牙河羅
え、そんな取れねえの?
あなた

普通取れない。じわじわやんないと取れない

牙河羅
牙河羅
まじか…
今あなたと一緒に、近くの喫茶へ来ている。こんな場がオレに合わないのは、百も承知なんだが、あなたに引っ張られたら断れなかった。不覚…。
牙河羅
牙河羅
…お前にコレやるよ
あなた

え、くれるの?

牙河羅
牙河羅
オレんちにあったって、使いみちねえしな。それに…
あなた

それに、なに?

こいつが持ってると、可愛さが増す。
牙河羅
牙河羅
んー…
あなた

言って?隠し事なし

それにを付け足したことに、少し後悔する。
彼女の目は、オレに「なんでもない」とは言わせてくれなかった。
牙河羅
牙河羅
あなたの可愛さが増す、というか…似合うというか…
膝に置いていたライオンを、あなたの顔の前に突き出す。
あなた

…へっ!?いや、う、うん?ありがと

お互い顔を赤くしながらも、オレはぬいぐるみを手放し、あなたはそれを受け取った。
置かれた水を氷ごと口に流し込み、チラっと彼女のことを見る。すると、その顔は会ったときとは別人のような笑顔だった。
牙河羅
牙河羅
お前、誕生日いつだ?
あなた

え、誕生日?

牙河羅
牙河羅
おう
今ライオンをあげたのは、ただ似合うだけだったから。初めての『贈り物』からオレの頭が連想させたのは、女が好きな誕生日プレゼントだった。
あなたの誕生日が今後あるなら、なんかあげてえ。そう思った。
さて、何日がたんじょう──
あなた

七月七日だけど…

牙河羅
牙河羅
……え?
あなた

七月七日。七夕だよ

牙河羅
牙河羅
…そうなのか、わかった
あなた

調子に乗ったオレが恥ずかしい…。

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