ゲーセン。戦闘系から音ゲーまで揃っている場所だが、実際オレは、ゾンビシューターにしかやったことがなかった。
そう、なかったんだ…今日までは。
手に持った可愛げのあるライオンのぬいぐるみを、赤くなった顔に押し付ける。
これはさっき、そのユーフォーなんだかで取ったやつ。…オレが。
今あなたと一緒に、近くの喫茶へ来ている。こんな場がオレに合わないのは、百も承知なんだが、あなたに引っ張られたら断れなかった。不覚…。
こいつが持ってると、可愛さが増す。
それにを付け足したことに、少し後悔する。
彼女の目は、オレに「なんでもない」とは言わせてくれなかった。
膝に置いていたライオンを、あなたの顔の前に突き出す。
お互い顔を赤くしながらも、オレはぬいぐるみを手放し、あなたはそれを受け取った。
置かれた水を氷ごと口に流し込み、チラっと彼女のことを見る。すると、その顔は会ったときとは別人のような笑顔だった。
今ライオンをあげたのは、ただ似合うだけだったから。初めての『贈り物』からオレの頭が連想させたのは、女が好きな誕生日プレゼントだった。
あなたの誕生日が今後あるなら、なんかあげてえ。そう思った。
さて、何日がたんじょう──
調子に乗ったオレが恥ずかしい…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。