「何やってんだよ。」
『先生... なんで?』
「朝日奈が俺に伝えにきた。携帯の充電なくなったから連絡付かなかったらしい。」
『ゆりちゃんが...』
先生... なんで雨の中傘もささず私のこと迎えにきてくれたの?
「てかお前、どうして朝日奈と瀬戸の連絡先しか知らねーんだよ。」
『コ、コミュ障が...』
「はぁ。まあいいや。帰るぞ。」
『はい。あっ...いたっ...』
「足怪我してんのか?」
『でも大丈夫です』
「いいから。乗れって。」
『無理無理!重いし!おんぶとか!』
「いいから!早く。」
先生... なんで私に優しくしてくれるの_?
私は、羞恥心を捨てきれないまま先生に
おんぶされた。
先生の濡れた髪。広い背中。全部にドキドキしちゃって。心臓の音が伝わりそう。
「てか携帯貸して?悪いことしねーし」
『信用できなっ。』
「信じろよ。笑」
私は恐る恐る携帯を差し出した。
先生は、片手で私を支えながら、反対の手で私のスマホをいじった。
「はい。これ。俺の連絡先。なんかあったら連絡してこい。」
『え!』
「あなた危なっかしすぎるし。生徒になんかあったら困るし。」
『... はい... 』
“ 生徒 ” に何かあったら...か。
私は生徒以上の何者でもないんだね。
スマホの画面に映し出された “ 高塚光希 ” の文字と連絡先。雨粒に紛れて、私の目から涙が流れた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。