先生に抱えられるのは2回目だ。
でも1回目の時と今では何か違う。
抱え方とかじゃなくて、私の気持ちが。
なんで素直な感謝の気持ちがわかないんだろう。
なんでモヤモヤするんだろう____
「まだ擦れてるだけでよかった。」
『だから怪我してないって言ったじゃないですか。』
「いや、怪我は怪我だから。無理すんな。」
指と指の間で違和感のある絆創膏。
漂う消毒液の匂い。
全部が私の思考を変にしそう。
「そういや、亜希は俺の姉ちゃんだから。」
『え?』
「亜希とその子供ら連れて今日来たの。なんかお前勘違いしてそうだったから言っとくけど。」
『そうなんですねー。
ていうか、勘違いなんかしてません。』
「じゃあなんで機嫌悪そうなの。」
≫ばぁぁん≪ 🎇
その時、外で花火の上がる音と歓声が聞こえた。
『まさか花火が上がる時間を医務室で過ごすと
思ってなかったからです。』
「そっか。まあ俺が知っといてほしかっただけだから。気にしないで。」
『...あっ、太陽からLINE...』
「っ...!」
『ってことなので。手当ありがとうございました。
じゃあまた。』
「ま、待って、俺も行く。」
『え?』
「いや、また痛めて歩けなくなるかもだし。」
私が先生を忘れるためにわざと冷たくしてるのに。
やめてよ。
嘘だよ。勘違いしたよ。彼女だって思ってたよ。
よかったって思っちゃったよ____
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。