第7話

にらみ合い
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2017/12/27 06:58
「あ!唄やっと見つけたー!」


屋上を出て廊下を歩いているとき
うっかが息を切らしながら私の元へやってきた



「もうこれから始業式だっていうのにどこ行ってたの?」

「ちょっと、屋上に行ってて」

「もう、捜したんだよー?」

「ごめん。転校生に職員室の場所聞かれたの」

「転校生?」







うっかはゆっくりと視線を隣にいる男の人に向けた

そして、目を丸くさせた





「し、柴隆也くん!?」





ん?

どっかで聞いたことある名前…






柴隆也…柴隆也って…









「えっっ!?柴隆也!?」




思い出した
今朝ニュースで話題になってたモデルの柴隆也くんだ

髪の毛黒に染めてるし、今朝のニュースのときよりも髪短くなってるから誰だか分からなかった





「え、唄気づいてなかったの!?」

「芸能人あんまり興味ないし」




元から芸能人に関しては疎いほう
この人も〈最近よくテレビに出てる人〉としか認識してなかった




でもまさかあの柴隆也があんな暴言を吐く最低最悪モデルだったなんて









「月野さんの知り合い?」



「…へ?」









屋上に私といたときとは打って変わってすごい笑顔だしさっきまで〈ブタ〉って言ってたのに〈月野さん〉?


え、誰?この人









「越野優香です!唄の親友です!」

「越野さんか。よろしくね」

「あ、あの握手してください!」

「握手?いいよいいよ」





これが営業スマイルというヤツなんだろうか

芸能人怖いな…









「おーい唄、優香」





少し向こうから私たちの元へやって来たのは悠真だった









「始業式始まるぞ」

「あ、うん」

「ほんとだそろそろ行かないと」




腕時計を確認すると始業式が始まるまであと5分ほどだ
でも柴隆也にも職員室の場所教えてあげないと




「……」

「唄何やってんだ、置いてくぞ」

「えっと…」




どうしよう










「彼女に職員室まで連れて行ってもらってる途中なんだ」



柴隆也が悠真に言った

悠真の視線は私から柴隆也へ









「アンタ、モデルの柴隆也?本物?」

「そうだけど」

「なんで今売れてるモデルがこんな普通の高校転校してきてんの?芸能科がある高校行けばよかったじゃん」

「こっちにも事情があるからね」





事情って、なんだろう

それよりも悠真と柴隆也のにらみ合いが怖い

これなんか喧嘩とか始まったら困るなぁ…





「悠真はうっかと一緒に先に体育館行ってて。柴さん職員室まで連れていったらすぐ行くから」


「…」


「じゃ、そういうわけで」









私は柴隆也を職員室まで連れていった



















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