走って、走って、走った。
家を出てから、自分のカバンを持っていないことに気づく。
嘘、家に帰れないじゃん。
えっ…!
私はとっさに振り向く。
は、早くない!?
私はまた走る。
走りながらいう。
あっ、うそ…
道路を渡ろうとした時、横から車が来ていた。
間に合わない…
その時、腕を掴まれて、後ろに引かれる。
重い空気が2人の間に流れる。
先生は、何も言わずに、私の方を見た。
先生は、さっきと打って変わり、優しく言った。
自然と涙が溢れる。
私は、泣き叫ぶ。
心の何処かに貯めてあった、本当の気持ちを。
ごめん、ごめんね先生。
私は、ゆっくり立ち上がった。
そして、歩き出す。
でも、先生は、私の腕を掴んだ。
うん、話したい。
先生の気持ちも聞きたい。
けど、ごめん。
今の私には、そんな余裕がないの。
すると、一瞬、先生の掴む手が緩む。
その隙に私は走り出す。
私の腕が先生の腕から、するりと抜け落ちた。
ーひとことー
あー!!先生ーっ!!!
なんか、悲しいなぁ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。