名前を呼ばれた瞬間、私は先生の胸に飛び込んだ。
抱きつきながら、思い切り泣いた。
本当は、悲しかった。寂しかった。離れたくなかった。
先生が大好きだった。愛してた。
ううん、今も大好きだし、愛してる。
先生の温もりが、体が、全て愛おしい。
先生は、私を抱きしめ返す。
私は頷く。
そっか、良かった。
でも、それなら先生遅すぎ。
それが決まった瞬間にでも私のとこ来て欲しいかったのに。
その後、しばらく2人で海を眺めて帰ることにした。
先生はヘルメットを私の方に向かって投げてきた。
えっ、てか、カッコいいんだけど……
先生は、私が持っていたヘルメットを取り、私に被せた。
先生はエンジンをふかした。
私はバイクにまたがる。
バイクのエンジン音に負けないように言う。
うわ、やばい……
私は、先生を後ろから抱きしめるようにした。
あぁー、また泣きそう。
数時間前まで、陸と一緒にいて、こんなことになるなんて思いもしなかった。
でも今は、先生がここにいる。
そして…今までの出来事が頭の中をよぎる。
あぁ、長かったな……
ー先生目線ー
しばらくバイクを走らせていると、後ろであなたが肩を震わせていた。
何かあったのかと思い、考えた。
そうか……泣いているのか。
これだけあなたを苦しめさせ、悲しませたのは…俺だ。
あなた、ごめんな。
………でも、好きだ。
愛してる。
もう、悲しませたりしないから。
ずっと…俺のそばにいて………
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!