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第4話

目の前には巨大なミミズ。力を試すには丁度良い。昔、前の世界と次の世界で力の差が激しすぎた事があって、大怪我をした事があるから、今回は慎重に行こう。

 「初撃に気合いをいれよう」

 拳を固くし、腰を落としミミズに踏み込む構えになる。

 「た、田崎君な、なにやってるの!? は、はやく逃げないと!!」

 後ろから後藤さんの恐怖に包まれた声が聞こえた。

 へぇ~。割りとすごいなこの子。クズどもと違ってちゃんと声が出てる。

 人は恐怖や限界を超えた現実を目の前にすると、脳がまともに機能しなくなって、喋れなくなったり、笑いが込み上げてくるものだが……後藤さんは強い。逃げるという判断がちゃんと出来てる。それに比べて他の奴等は……。

 それはもう酷すぎる様だった。現実から目を逸らす様に地面に顔を埋め、体を丸くして、まるでダンゴ虫の集団だ。

 「さて、俺も目の前の奴にって――」

 既にこっちにミミズは突進して来ていた。図体の大きさの割りには凄く素早い動きだった。

 俺はそれ以上余分な口を開かずに真っ直ぐミミズに拳を突きだした!

 「って、えぇ!」

  拳が当たる直前まで来た所で急にミミズが進路を変えた。俺から後ろの馬鹿どもに。

 「みんな逃げて!!」

  後藤さんが叫ぶ。地震で地面に落とした腰を上げて、ミミズを追いかけるように馬鹿どもの所へ向かう。

 「昔の俺に少し似てるな」

 俺にもあんな時代があった。自分ではなく周りを第1に優先した時期。しかし、経験を重ねる事で分かったのだ。自分より周りを優先するのは馬鹿か、偽善者がやる事だと。

 「し~かし、それは俺の獲物だ」

 俺はダッシュでミミズの元へ向かう。その速さはオリンピックで金メダルを取れるとか、生温いレベルではない。常人とは桁外れ過ぎるスピードだ。慣れていなければ目で追うことすら出来ない。

因みにこの身体能力は転生能力の1つだ。魔力を腕や足に集中させる事で身体能力を底上げする。おそらく定番の言い回しは身体能力強化だろう。普通の生身の状態ではモンスターに歯が立たない。だからこの能力を使うのだ。俺は基本的に戦っている時、いつもこれを使用している。


 足を動かした俺は一瞬で後藤さんを追い抜き、ミミズの元まで追い付く。しかし追い付いた所で思う事があった。

 「こんだけデカイんだからわざわざ頭部を狙う必要なかったな」

 ケツの方を地面ごと貰ってくという方法もあった。そっちの方が楽だった。

 「じゃあ、初撃行くぞ」

 そう拳を固くし繰り出したのだが、またも避けられた。俺はこの時のミミズの避けかたに違和感を感じた。凄く必死で避けているのだ。しかし、それが地味に片手間になっているのだ。普通じゃ絶対にありえない現象だ。

 人間で例えるなら、サッカーで高度ドリブルをしながら横から飛んでくる矢を避けている感じだ。ドリブルは無理にする必要はない。つまり、この場で言うなたこの馬鹿どもを限定して無理に襲う必要はないのだ。

 俺を襲えば良いのに、なぜ襲わない。そして、俺の攻撃を必死で避けながらも、どうしてこいつらを襲おうとする?

 俺は違和感が鬱陶しくて、それを解決する物を探そうと、ミミズの周りを見てみた。そして違和感はわりと直ぐに見つかった。それは――

 「二ャルほど~」

 ミミズの殻に大きくヒビが入ってるのに気づいた。ミミズは水分がなければ死んでしまう。経験上、このミミズの殻は水分を要して形を保ってると思われる。つまり、このミミズは一刻も早く水分が欲しいのだ。生きるために。自分の身を守るために。
 しかしそれなら俺を食えば良い。この年なら約65パーセントが水分だ。水分が欲しいのに目の前の水分を取らない理由。それは実に簡単な事だ。……取らないのではなく、取れないのだ。つまり、この巨大なミミズは本能的に俺との戦闘を避けてるのだ。そして、今、目の前のゴミカスどもを食おうとしている。なぜなら、人数が多いし、自分に抵抗する事も出来ないゴミカスだから。

 なら簡単だ。俺がする事は決まってる。それは――

 「街に行こう」

 強さを確かめるために戦闘を行った訳だから、もう目的は達成された。ならもう戦闘する意味はない。さっきのダッシュで自分の体がどのくらい鈍ってるのかも分かった。

 俺の攻撃が止むとミミズの速さは安心する様に急激に落ちた。

 「モンスターの割りには頭がいいな。さて、街に行こう」

 俺は街の方へ歩き出す。しかし、そんな俺を静止する声が入る。

 「ちょっと田崎くん逃げないで、これ倒すの手伝ってよ!!」

 声のする方向を見ると、衝撃の場面が写し出されていた。アイルドルを中心にゴミクズがミミズに応戦しているのだ。しかも、さっきまで地べたに這いつくばっていた、馬鹿なリーダーもアイドルの隣で指揮を取っている。しかし、されど平和ボケした日本人だ。全然、指揮がなってない。相手の行動パターンも詠まずに適当に魔法を打っている。

 「いつのまに……魔法が9人か。他は剣士か?」

 魔法を打ってる奴以外のアホどもは、ミミズの前を駆け回っている。恐らく囮だろう。そうでなきゃ、本当に馬鹿でしかない。

 「あいつら、俺と後藤さんが話してる間に魔法を少し練習しやがったな」

 見ていてなんとなくそう思った。しかし、それは当たり前の事だ。人は好奇心に抗う事が出来ないのだから。まぁ、もしくは危機感に反応して体が勝手に動いたのかもな。

 「田崎くん!! 」

  再度後藤さんが叫ぶ。

 後藤さんも馬鹿だな。俺は別に逃げる訳じゃない。だけど、もし俺が逃げているのら、そんな奴に助けを求めるのは間違ってる。俺は、そんな事も分からない馬鹿どもを助ける気にはならないな。

 「頑張って抗ってください」

  俺はそう言ってその場から立ち去った。後ろからは何度も俺の名前を叫ぶ声が沢山聞こえた。しかし俺が振り返る事はなかった。ただ、それから数十秒後に悲鳴が聞こえたのは少し気になった。

歩いてから数分後、俺はある事に気づいた。

「そういえば、魔力の使い方は思い出したけど、自分の魔力量を確認するの忘れ得たな。どうするか……魔力を的確に知るには、使いきるのがいいけど、こんな所で使いきる訳にはいかないし……まあ、今急いで知る必要はないから大丈夫だろ。さっきのミミズとの戦闘で、大体の相手は身体能力強化でどうにかなる事が分かったし……」

俺はミミズが大きいから強いと判断していた。しかし、決してそんな事はないのだ。大きいから必ずしも強いって事は……ないのだ。

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