第6話

爽やか王子!! 桐ヶ谷 京也
88
2018/11/14 07:48


――妄想中――
桐ヶ谷 京也
桐ヶ谷 京也
大丈夫?
そっと私を抱き寄せて微笑む爽やか王子。
月森姫花
月森姫花
だ、大丈夫です。あ、あの貴方は――
桐ヶ谷 京也
桐ヶ谷 京也
僕のことよりも君の方が大事だよ
私の耳元でそう囁くと、爽やか王子は私の体を優しく持ち上げてお姫様抱っこをする。
桐ヶ谷 京也
桐ヶ谷 京也
怪我しているかもしれないから、医務室に行こう
月森姫花
月森姫花
え、でも――
桐ヶ谷 京也
桐ヶ谷 京也
言ったろ? 君が大事だって。
大丈夫。君が怪我していないか僕がちゃんと診察するから
月森姫花
月森姫花
は、はい
心を優しく包み込むような笑みに、私は思わず頷き――






――何かに腕を力強く引っ張られた(妄想終了)。
九条怜
九条怜
コイツは頑丈だから大丈夫だ。
自転車ごと川に突っ込む馬鹿だしな
妄想の世界にいた私は、気づくと外道王子に抱き寄せられていた。


こ、これが夢のヒロイン争奪なの⁉
 と、思わずどきまきしちゃうけど……。

なんで外道王子に抱き寄せられたのか、いまいち状況がわからない。
だけど、一つはっきりとした。


やっぱりこの人は嫌な人だと!
桐ヶ谷 京也
桐ヶ谷 京也
だからといって、女の子にその言い方はどうかと思いますよ、九条社長。もっと優しく接してあげないと
そうだ! そうだ! もっとこの外道さんに言ってあげて! 爽やか王子様‼
私はコクコク頷きながらエールを送った。
九条怜
九条怜
京也、お前はいつもうるせぇな
桐ヶ谷 京也
桐ヶ谷 京也
僕は九条社長を心配なんですよ。
……そうやって女の人に冷たく接していると、嫌われちゃいますよ?
九条怜
九条怜
余計なお世話だ。それよりも勝手に入ってくるなといつも言っているだろ
桐ヶ谷 京也
桐ヶ谷 京也
撮影が終わったので。
社長に挨拶もしないで帰るとか、失礼になりますしね
な、なんだろ……。この二人、すごく険悪な雰囲気だよ。仲悪いのかな?
それに外道さんのことを九条社長って……え? 社長っ⁉
月森姫花
月森姫花
あ、あの――……もしかしてこの人、何かの社長さん? なんですか?
桐ヶ谷 京也
桐ヶ谷 京也
? そうだよ? 
……もしかして教えてないんですか?
九条怜
九条怜
……ああ、言ってねぇ
桐ヶ谷 京也
桐ヶ谷 京也
じゃあ、僕が教えますね。
この人は九条怜、ここファッションデザイナー事務所『ノイン』の社長なんだ。
僕は桐ケ谷京也、ここの専属モデルなんだよ。よろしくね
桐ケ谷様はニッコリと笑うと、白くて綺麗な手を私に差し出してきた。
月森姫花
月森姫花
わわ私は月森姫花ですっ!
桐ヶ谷様のイケメンスマイルに思わず頬が熱くなる。

も、もう死んでもいいかも……。


わたわたと興奮する脳内を落ち着かせながら、私は桐ヶ谷様の手を握ろうとした。
その瞬間――バチン、と響いた。
九条怜
九条怜
俺の嫁に触れるな
その音は外道――九条さんが桐ケ谷様の手を払う音だった。
桐ヶ谷 京也
桐ヶ谷 京也
……嫁? 
もしかして今日のお見合い相手って姫花ちゃんだったの?
九条怜
九条怜
いや、そっちは丁重に断った
い、いきなり姫花ちゃんだなんて⁉ 恥ずかしすぎるよ!
それにこの人、丁重に断ったって絶対に嘘――じゃなくて⁉
月森姫花
月森姫花
わ、私結婚するなんて一言もい――
九条怜
九条怜
これから姫花の両親に挨拶に行くから、用がねぇならさっさと帰れ
月森姫花
月森姫花
――ってえええええ⁉
両親に挨拶⁉ しかも姫花と呼び捨て⁉ もう意味がわからないよ‼
桐ヶ谷 京也
桐ヶ谷 京也
……僕が見る限り、姫花ちゃんは了承してなさそうだけど?
桐ケ谷様~‼ 私の味方は貴方様だけですぅ‼ 
もっと言ってやって下さい! この鬼畜外道に‼
九条怜
九条怜
……お前には関係ないだろ
桐ヶ谷 京也
桐ヶ谷 京也
……はぁ、わかりましたよ。明日も朝早いのでもう帰りますね。
姫花ちゃん、もし本当に嫌だったら、いつでも相談に乗るからね
すでに嫌です‼ 桐ケ谷様ぁ‼
月森姫花
月森姫花
え、あの、まってきりが――
桐ヶ谷 京也
桐ヶ谷 京也
またね、姫花ちゃん
――バタン。
桐ケ谷様に助けを求めようと伸ばした手は、無情にも扉によって閉ざされてしまった。


ひ、1人にしないで……桐ヶ谷様。
九条怜
九条怜
邪魔なやつも消えたし、さっさとお前の家に行くぞ
……私、本当にどうなっちゃうの?

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