朝弥の台詞を遮った虹子が、まるでオモチャでも取り出すような気軽さで、朝弥が持っているものと同じ種類の銃を取り出した。
美琴を置いてきぼりにして、話がどんどん進んでいく。頭が思考を放棄してしまっている美琴には、もはやどうすればいいのかさえもわからない。
それを察したのか、朝弥が少し困ったふうに微笑して、浅く首を傾けた。そうすることで、いつも落ち着いている彼が僅かに幼く見え、美琴はひそかに胸を高鳴らせる。
***
三人は、夜の公園へと場所を移した。
自動販売機から戻ってきた虹子が、美琴に缶を差し出す。
先程済ませた簡単な自己紹介以降、何故か美琴は虹子から【みぃちゃん】と呼ばれていた。
彼は朝弥にも缶を渡す。
朝弥は虹子から【あっちゃん】と呼ばれているらしかった。
美琴を中心にして三人はベンチに腰掛け、さっそく虹子が缶のプルタブを起こす。足を組み、缶のジュースを呷る彼の姿は、まるでおっさんであった。
美琴を覗き込んで、虹子は訊く。美琴はあわてて、自身の疑問を頭にうかべた。
そこまで言ってから、朝弥はいくらか迷う素振りを見せて続ける。
冗談を言っているふうには見えなかった。その台詞をくちにしたのが朝弥でなければ、美琴は笑い飛ばしていたかもしれない。
馴染みのない言葉に美琴が戸惑えば、虹子は微笑んで問い掛ける。
彼はそこで僅かに言い淀み、足を組み変えて継いだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!