第2話

文通部?
1,086
2018/11/05 11:58
***



藍原 文香
藍原 文香
ここだ……

【文通部】という木製の札が掛かった部屋の前で、文香は立ち止まった。


中から声は聞こえてこないが、照明は点いている。


部員が誰かいるようだ。


文香はおもむろに二回、扉をノックした。

はい

男子生徒のくぐもった返事が聞こえ、文香がドアノブを握ろうとすると、それよりも先に扉が内側へと開いた。
竹間 信親
竹間 信親
あ……新入生かな?
こんにちは
藍原 文香
藍原 文香
こ、こんにちは

中から姿を現したのは、長身の男子生徒だ。


細身で華奢だが、温厚で優しそうな顔をしている。


彼は文香を見下ろすと、目尻を下げて微笑んだ。

竹間 信親
竹間 信親
見学に来てくれたの?
藍原 文香
藍原 文香
そうです
竹間 信親
竹間 信親
ああ、よかった!
今年はまだ一人も新入生が来てなかったんだ。
どうぞ、中へ
藍原 文香
藍原 文香
……はい

現時点では入部希望者がいない、ということだ。
藍原 文香
藍原 文香
(それを素直に言ってしまうところがまた……)

文香が部室の中へ入ると、あと一人、男子生徒が机に向かって作業しているのみで、他は誰もいない。


つまり、今活動しているのは、実質二人だ。

藍原 文香
藍原 文香
えっと……
窪田 響介
窪田 響介
こんな珍しい部活に、興味を持つ子がいたんだ?

文香が戸惑っていると、作業をしていた男子生徒が顔を上げ、意地悪そうに問いかけてきた。

その顔には見覚えがある。
藍原 文香
藍原 文香
あ……!
窪田 響介
窪田 響介
あれ?
この前、うちの写真部に見学に来た子だ。
千歌の従妹いとこだよね?
藍原 文香
藍原 文香
はい。
えっと……窪田くぼた先輩、でしたよね?
窪田 響介
窪田 響介
そう、当たり。
ただ、俺は正式な部員じゃなくて、助っ人
藍原 文香
藍原 文香
助っ人?

窪田の手元には、途中まで書かれた縦書きの便箋と、万年筆が置いてある。


近くに封筒もあるところを見ると、誰かと文通をしているのは確かのようだ。

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