しかし、その拳は燎君には当たらなかった。
凌久と燎君の間に入ったその人は凌久の拳を横から受け止めていた。
その言葉に一瞬だけ凌久の表情が引き攣った。
燎君は言われ慣れないのか苦笑いを浮かべる。
そして、護衛係がキッと凌久を睨み…
何かが重なったように凌久はハッとした。
楓は凌久を軽く睨むと、燎君から引き剥がすように押した。
何歩か後退りした凌久はかなり頭にきたようだったが、ここで暴れるのはマズいと思ったのか大きく舌打ちをして、千棘と自分達の席へ。
千棘に手招きされ、私は2人のところへ。
私が千棘に呼ばれたことに周りの人がコソコソと何かを話し出す。
まぁ、どうせ私が上がったことに驚いたんでしょ?
見ときなよ。この2人もいつかは落ちるから…
スマホで怜央と見たコンクールの時の木城風月の写真と楓を見比べてみる。
表情とか目付きとか…色々と変わってるから…
まぁ、分からないかな。
楓達を見ると、不満げに何かを訴える楓と少し照れくさそうに笑う燎君。
楓が大きく溜息をつく。
………ん?何だろ?今の言葉に何か違和感が…
二人の会話に微かな違和感を感じたが、それが何なのかまでは私には分からなかった。
でも、楓に何かありそうということだけは分かる。
その日の昼休み、何故か私服姿で息を切らしている悠翔君が教室に着た。
悠翔君に急かされ、柚稀が荷物をまとめる。
そして、ブツブツ不満を漏らしている柚稀が廊下に行く。
手を引っ張ると、2人はいなくなり、次の日。
柚稀は学校を休んだ…。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。