日にちが過ぎていき、土曜日。
男女共に出場する大会の会場にやってきていた。
あの日以来、全く柚稀と倉科君は話さなかった。
楓と燎君も何も言わない。
そして、柚稀は大声で倉科君に「大嫌い」と言ったせいで多数の女子から冷たい目で見られていた。
少し暗い声で言う倉科君。
柚稀との喧嘩を本当に反省しているようだ。
会場に入ろうとした時…
何処か聞き覚えのある声が背後から聞こえた。
振り返った燎君は少し驚いたあと、笑う。
両手に大きなビニール袋を持つ私服姿の琉依がそこに立っていた。
どうやら、雅はいなく1人みたいだ。
琉依が大量のビニール袋を燎君に渡す。
その中にはスポーツドリンクとリストバンドが沢山入っていた。
男子のより少し小さなビニール袋を貰いながら、沙羅が琉依にお辞儀をする。
琉依は少し困ったような表情をした後に、私の方を少しだけ見ると…
めぐみか…何か懐かしいかも。
別にもう関わる必要なんてないから、他人として戦うに決まってるけど。
軽く頭を下げると、琉依は会場のギャラリーの方へと向かっていなくなった。
そうして、始まった秋の大会。
千代瀬高校は強豪校としての威厳があり、女子の試合は順調に進んでいた。
やっぱ、千代瀬高校はレベルが高い…。
そんなことを思っていると、何試合目かの試合に見覚えのある人がベンチから出て来た。
笑顔のめぐみに苛立ちを覚える。
何で笑ってるの?
アンタは完全に嫌われるように仕向けたのに…
私はスグに雪村先生の元へ。
潤と交代して、私はめぐみにつく。
最初は私だと気付かなかっためぐみ。
だが、めぐみにボールが渡ってドリブルをつく時に目が合って、軽く目が見開かれた。
私はニヤリと笑い、そう呟くとボールを取って、反対のゴールへと決めた。
沙羅とハイタッチを交わし、めぐみを見る。
私はそう鼻で笑った。
この後も私の立場に不満を持ってるのか、意味が分からないのか動きが鈍いめぐみのボールを何回も取って、シュートを決める。
その度に沙羅に褒められ、心の中で喜んだ。
もっと…もっと!もう一押しでいける!!
完全にめぐみの心が折れているところにどんどん刃を突き刺すように抜かし続けた。
そうしている内にいつの間にか試合は終わって、結果は千代瀬高校の圧勝。
沙羅が私のことを大絶賛する。
その言葉に心の中で1軍に上がれる可能性の高さに喜びを噛み締めながら…
…と、満面の笑顔を浮かべた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。