3日目、最終日。
午前中は私達は自由時間で、劇の子が店番。
午後は全員で頑張る。
3日目になると、普段なら見ない他校の男子生徒やみんなの家族など、大勢の人が来ている。
午後になり、教室に戻る。
すると…
他校の男子生徒2、3人に絡まれている沙月。
沙月は外向けの顔が出てるのか、苦笑いを浮かべてただただ嫌がるだけ。
それに気付いている綾もオドオドとしている。
しつこい男子の態度にあからさま、沙月の顔が引き攣っている。
すると…
そう言うと、雅が男子生徒の手首を掴み、外へと向かってしまった。
戻ってきた雪奈とめぐみが不思議そうな顔をして、教室を見回す。
あまり分かっていないけどクラスをまとめようとする雪奈をよそに、沙月はイラつきから舌打ちをした気がした…。
すると、約1時間後…
ピンポンパンポーン
[2年4組の伊藤雅さん、今すぐ校長室まで来てください。]
雅の呼び出しの放送に琉依が溜息をつく。
しばらくすると、雅が帰ってきた。
雅が何事も無かったように仕事を始める。
外が少しオレンジ色に変わり、文化祭が終わる。
生徒は校庭に集められ、校長先生の講評を聞いた。
でも、誰もが結果発表に気が向いて聞いていない。
[次にクラスごとの出し物、演劇の結果発表をしていきたいと思います。まずはクラスごとの出し物。食べ物部門は ───]
心配そうにする綾。
そりゃそうだ、盛大にセリフが飛んでたんだから。
[演劇、準優勝は4票の僅差で2年3組。]
隣の列から歓声があがる。
[演劇、クラス部門優勝は……3年1組。]
近くからそんな声が聞こえてくる。
沙月は1位2位が取れなかったと分かった途端、パッと柚稀の方を見た。
柚稀はヘッドホンをして、スマホを触っている。
優勝とかに興味を持っていないように見えた。
[個人部門、準優勝は2年3組福田優梨さん。]
福田さんと言えば、確か、主役をやっていた子。
やっぱり、主役の方が優勝は狙いやすいんだ。
綾は黙って手を合わせ、目を瞑っている。
[個人部門、優勝は……2年4組空閑柚稀さん。2位とは大きく差をつけての優勝です。]
去年、優勝を飾った綾が声を漏らす。
その瞬間、沙月とめぐみがもの凄い不満そうな顔をしたのを私は見逃さなかった。
ヘッドホンで音楽を聴いて、呼ばれたことに気付いていない柚稀。
雅が柚稀のヘッドホンを取った。
優勝なのに準優勝より反応が薄い。
去年の綾は跳ねて喜んでいたのが印象深い。
そっと横目で綾を見ると、綾は柚稀を睨んでいた。
すると、小さな声で有咲が…
有咲の言う通りだ。
派手系はヤンキー系を落としたいから、ここで雅を落としたら沙月から見た私達の印象が上がる。
まぁ……
…最後は有咲にも落ちてもらうけど……ね?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。