大会が終わったと思うと、いつの間にか千代瀬高校に転校してきてから1ヶ月が経っていた。
そんなことを昼休みに小さく呟いていると…
沙羅が初めてお昼を一緒に食べようと言ってきた。
これは仲良くなれるチャンス…!
沙羅に手を引かれ、私達は駆け出す。
食堂に行き、お昼ご飯を注文し受け取ったところで沙羅が食堂の奥に向かう。
ついて行くと、千棘、凌久、琉希、徹が座ってた。
沙羅に押され、私は沙羅と千棘の間に座る。
この2人の間なんて1番気まずくてしょうがない。
思ったことをそのままスラスラと喋った私。
喋った後になってから自分の口が悪さに気が付く。
奪い取って清々しいって最悪なこと言ってる…。
思っていることが表情に出ていたのか私を見た千棘は少し笑った。
そう言い、凌久が苦笑いを浮かべる。
今度は私が2人の反応に思わず笑ってしまった。
マジか…。
何か沙羅のおかげであっという間に1軍に…
喜びを噛み締めて、笑顔で礼を言う。
バスケ部に入って良かったとこのとき、初めて思うことが出来た。
全てが順調、そう思っていた日の放課後。
部活が終わり帰ろうとした時に…
体育館の入口で徹が待っていることに沙羅が気がついて声をかける。すると、徹は…
その瞬間、私の心が冷や汗をかき始める。
嘘…もしかして、徹に下剋上がバレた?
1軍とはいえ、徹にはあまり警戒していなかった。
それが駄目だった?
どうしよう…。こんなところでバレたら…
沙羅がいなくなり、私はどうしたらいいのか分からないから取り敢えず、家の方向に歩き出す。
2人で学校から十何分か歩いたところで徹がいきなり立ち止まり、私も足を止める。
間抜けな声を出した私。
バッと慌てながら振り返ると、徹は真っ直ぐな目で私を見ていた。
ボソボソと小さい声で言ったが、確実に「可愛い」と言われ、私は顔が熱くなる。
まさかの徹に告白されるなんて…そんなこと思ってもいなかったなぁ。
1軍の彼女なら地位はさらに上がるよね?
それに…別に嫌いじゃないし…
そう言って、笑った徹の笑顔に私の胸がキュッと締め付けられ、熱くなる。
あくまで地位のため…地位のためだから……
照れ臭そうに頭をかく徹が新鮮でしょうがない。
きっと、自分に彼女が出来たってことでいじられるのが嫌なんだろう。
元から怜央と話す時、下の名前なんだけどねぇ…
不思議な空気に無言になってしまう。
すると、徹が気付いたように…
徹に"弥生"と呼ばれると何か調子が狂う。
「家どっち?」と聞かれ、慌てて答えると私は徹に家まで届けてもらった……
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!