第81話

昇格
2,496
2019/03/17 09:17
大会が終わったと思うと、いつの間にか千代瀬高校に転校してきてから1ヶ月が経っていた。
三室 弥生
1ヶ月経ったのに落としたのは琴葉の1人だけとか…
そんなことを昼休みに小さく呟いていると…
夕凪 沙羅
や〜よ〜いっ!
三室 弥生
どうしたの?
夕凪 沙羅
今日、千棘達もいるけど、良かったら一緒に食べない?
三室 弥生
え、いいの!?
夕凪 沙羅
うん!
沙羅が初めてお昼を一緒に食べようと言ってきた。


これは仲良くなれるチャンス…!
三室 弥生
いいなら、一緒に食べたい!
夕凪 沙羅
今日は学食で済ますことになってるけど、食堂で大丈夫?
三室 弥生
全然!
夕凪 沙羅
それじゃあ、レッツゴー!
沙羅に手を引かれ、私達は駆け出す。
食堂に行き、お昼ご飯を注文し受け取ったところで沙羅が食堂の奥に向かう。
ついて行くと、千棘、凌久、琉希、徹が座ってた。
楪 千棘
凄い遅いと思ったら何?三室を連れてきたの?
夕凪 沙羅
何か女子少ないの嫌だし〜?弥生、大会で大活躍したからその話もしたい!
八代 琉希
おっ、転校生でいきなり大活躍とか凄い気になる!
夕凪 沙羅
でしょでしょ?千棘も話してみなよ!話してると楽しいと思う!
楪 千棘
う、うん…。
夕凪 沙羅
ほら!弥生はここ!
三室 弥生
えっ…
沙羅に押され、私は沙羅と千棘の間に座る。
この2人の間なんて1番気まずくてしょうがない。
夕凪 沙羅
じゃ、いただきま〜す!
三室 弥生
いただきます…。
楪 千棘
それで?沙羅がこんなに褒めてるとか凄いけどどうだった?
三室 弥生
え?あ、えっとね、前の学校の子もいたんだけど、もう何回もボール奪い取って何か清々しかった!
思ったことをそのままスラスラと喋った私。
喋った後になってから自分の口が悪さに気が付く。
奪い取って清々しいって最悪なこと言ってる…。
思っていることが表情に出ていたのか私を見た千棘は少し笑った。
楪 千棘
そんな口の悪さ気にしなくていいよ。別に清々しいならそれでいいじゃん?ね、凌久?
榎本 凌久
まぁな。それで駄目だったらここに俺はいねーよ。
そう言い、凌久が苦笑いを浮かべる。
今度は私が2人の反応に思わず笑ってしまった。
三室 弥生
あ、ごめんね?2人が思ってたより面白い人だったからつい…
楪 千棘
ほんと、いきなり三室は不思議なこと言い出すね。凄い面白いんだけど。
夕凪 沙羅
でしょ〜?言ってるじゃん!どう?徹も思わない?
篠田 徹
俺?別に今、一緒に食べる前から結構面白い人って思ってたけど…。
八代 琉希
おっ、徹が誰かを面白いとか言うなんて雨でも降るんじゃね?
篠田 徹
はぁ?降るわけないだろ。
八代 琉希
冗談に決まってんじゃーん!そんなことでピリピリするなって!
篠田 徹
ったく…
夕凪 沙羅
ねーねー!グループに弥生を入れたいんだけどいいかな?
八代 琉希
俺は賛成!
篠田 徹
どっちでも。
夕凪 沙羅
千棘と凌久は?
榎本 凌久
ああ、いいぞ。
楪 千棘
うん。話して面白かったし。
マジか…。
何か沙羅のおかげであっという間に1軍に…
三室 弥生
ありがとう!!
喜びを噛み締めて、笑顔で礼を言う。
バスケ部に入って良かったとこのとき、初めて思うことが出来た。
全てが順調、そう思っていた日の放課後。
部活が終わり帰ろうとした時に…
夕凪 沙羅
あれ、徹?どうしたの?
体育館の入口で徹が待っていることに沙羅が気がついて声をかける。すると、徹は…
篠田 徹
ちょっと、三室に用がある。
三室 弥生
……。
その瞬間、私の心が冷や汗をかき始める。
嘘…もしかして、徹に下剋上がバレた?
1軍とはいえ、徹にはあまり警戒していなかった。
それが駄目だった?
どうしよう…。こんなところでバレたら…
篠田 徹
まぁ、そんなわけなんだけど…いい?
三室 弥生
う、うん…。
夕凪 沙羅
じゃあ、2人共また明日ね〜
篠田 徹
おう。
三室 弥生
ばいば〜い!
沙羅がいなくなり、私はどうしたらいいのか分からないから取り敢えず、家の方向に歩き出す。
2人で学校から十何分か歩いたところで徹がいきなり立ち止まり、私も足を止める。
篠田 徹
なぁ、三室…
三室 弥生
はい?
篠田 徹
俺、三室のこと多分好きだと思う。
三室 弥生
へっ?
間抜けな声を出した私。
バッと慌てながら振り返ると、徹は真っ直ぐな目で私を見ていた。
篠田 徹
俺、昔からこんな性格で他人に興味は無いし、たまに誰かと話したりしてもあまり弾まなくてつまらないとかよく言われてさ。まぁ、別に俺もつまらないから気にしないけど。でも、何か…
三室 弥生
何か…?
篠田 徹
三室と話すのは楽しかった。それにあのぶつかった時に必死に頭を下げてたのが少し…可愛かったし……
ボソボソと小さい声で言ったが、確実に「可愛い」と言われ、私は顔が熱くなる。
篠田 徹
だから…もし、良かったら俺と付き合ってくれないかな?
まさかの徹に告白されるなんて…そんなこと思ってもいなかったなぁ。
1軍の彼女なら地位はさらに上がるよね?
それに…別に嫌いじゃないし…
三室 弥生
……いいよ。
篠田 徹
ほんと?
三室 弥生
うん!
篠田 徹
良かった……ありがとう。
そう言って、笑った徹の笑顔に私の胸がキュッと締め付けられ、熱くなる。
あくまで地位のため…地位のためだから……
篠田 徹
あとさ、凌久達には何か恥ずかしいから秘密にしてもらってもいい?勿論、沙羅達にも。
三室 弥生
分かった、秘密にしとく。
照れ臭そうに頭をかく徹が新鮮でしょうがない。
きっと、自分に彼女が出来たってことでいじられるのが嫌なんだろう。
三室 弥生
…あ、呼ぶの"弥生"でもいいよ?
篠田 徹
ん、俺も下の名前でいい。
元から怜央と話す時、下の名前なんだけどねぇ…


不思議な空気に無言になってしまう。
すると、徹が気付いたように…
篠田 徹
家まで送るよ、弥生。
三室 弥生
あ、ありがとう!
徹に"弥生"と呼ばれると何か調子が狂う。
「家どっち?」と聞かれ、慌てて答えると私は徹に家まで届けてもらった……

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