私は跳ねるように飛び起きた。
カラッカラになっている声。
汗で全身がびっしょり濡れている体。
時計を見ると、まだ5時半を示している。
あの夢は…何だったの……?妙にリアル…
でも、二度寝したら多分そのままお昼頃まで起きないような気がするんだよなぁ…
汗びっしょりだったことを思い出した私はシャワーを浴びることにした。
色々と考え事をしながら浴びているとスグに時間が経ち、いつもの登校時間より少し早いけど私は学校へ向かう。
朝練じゃない限り、誰も学校にいないだろう。
そんなことを思いながら、教室に入ると…
教室にいたのは、燎君、柚稀、楓。
燎君は何故か掃除をしていて、柚稀は珍しく腕まくりをして机に伏せ、楓はそんな柚稀を下敷きで扇いでいた。
苦笑いを浮かべながら、柚稀を見た燎君。
確かにいつもの柚稀と比べると今日はあまり元気がないように見えた。
細く息を吐き出し、捲ってた袖を元に戻す。
言われてみれば、年がら年中柚稀は長袖を着ているけど、汗をかいているのは見たことない。
楓の言葉に燎君が掃除をする手を止めた。
きっと、柊真に話をされたんだろう。
いつの間にか、教室に入って来ていた凌久が柚稀を威圧するような目で見ていた。
気が付かなかった柚稀が「ヤバい」と言いたそうな表情を浮かべる。
平然と認めた凌久。
凌久の何とも思ってない様子に燎君がバンッと机を強く叩いた。
教室にいる人達は不安そうな顔で2人を見ていた。
廊下にも野次馬が集まり始めている。
いつも笑顔で楽しそうに笑っている燎君が初めて怒って、初めて怒鳴り声を上げた。
燎君の正しい意見に「チッ…」と凌久がわざとか分からないが、大きな音で舌打ちをした。
燎君との距離を詰めた凌久が胸ぐらを掴む。
そして、燎君が抵抗する前に殴ろうと手を振り上げたのだった…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!