第83話

正義の塊
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2019/03/19 11:14
三室 弥生
……っ!?
私は跳ねるように飛び起きた。
三室 弥生
ゆ、夢…?
カラッカラになっている声。
汗で全身がびっしょり濡れている体。
時計を見ると、まだ5時半を示している。
あの夢は…何だったの……?妙にリアル…
三室 弥生
てか、5時半って…早すぎでしょ…
でも、二度寝したら多分そのままお昼頃まで起きないような気がするんだよなぁ…
汗びっしょりだったことを思い出した私はシャワーを浴びることにした。


色々と考え事をしながら浴びているとスグに時間が経ち、いつもの登校時間より少し早いけど私は学校へ向かう。
三室 弥生
おはよ〜ございま〜す……
朝練じゃない限り、誰も学校にいないだろう。


そんなことを思いながら、教室に入ると…
燎 颯斗
あ、三室ちゃん。おはよ〜
空閑 柚稀
はよ〜……
月城 楓
こんな早くから他の人が登校するとか珍しいな。
教室にいたのは、燎君、柚稀、楓。
燎君は何故か掃除をしていて、柚稀は珍しく腕まくりをして机に伏せ、楓はそんな柚稀を下敷きで扇いでいた。
三室 弥生
何で朝から掃除?
燎 颯斗
暇だったから?やることないし、話そうと思っても何か柚稀が潰れちゃってるからさぁー…
苦笑いを浮かべながら、柚稀を見た燎君。
確かにいつもの柚稀と比べると今日はあまり元気がないように見えた。
月城 楓
ほんと。どうした?柚稀らしくない。
空閑 柚稀
朝は眠いし、今日は暑いだけ〜…
細く息を吐き出し、捲ってた袖を元に戻す。
三室 弥生
暑いって言ってるわりには汗はかいてないみたいだけど…
空閑 柚稀
元からあまり汗かかないんだよねぇ…
言われてみれば、年がら年中柚稀は長袖を着ているけど、汗をかいているのは見たことない。
月城 楓
そう言えば、三室はどう思う?
三室 弥生
何が?
月城 楓
榎本が矢野を脅してたって話。三室は転校生だからあまり分からないかもしれないけど…
楓の言葉に燎君が掃除をする手を止めた。
きっと、柊真に話をされたんだろう。
三室 弥生
どうだろ…でも、琴葉ちゃん。榎本に少し怯えてる感じしてたような気もするかも…
月城 楓
だよな。燎、やっぱり園崎の話は多分本当だって。
燎 颯斗
信じたくないような内容だけど、こんなに同じことを思う人がいるんだったら本当かもね…。
月城 楓
どうすんの?言うの?
燎 颯斗
今日、言ってみるよ。まぁ、これでどうなるかは榎本の出方次第だから今の俺には何も出来ない。
月城 楓
まぁな。
空閑 柚稀
てかさ〜…榎本って所詮は暴力団総長ってだけでしょ?総長だからって団自体が強くなかったりしてー
月城 楓
でも、他の地域のやつとの喧嘩は毎回のように勝ってるって話を誰かから聞いたことある。
空閑 柚稀
まっ、絶対に負ける気はしないけど。
榎本 凌久
誰が誰に負ける気がしないって?
いつの間にか、教室に入って来ていた凌久が柚稀を威圧するような目で見ていた。
気が付かなかった柚稀が「ヤバい」と言いたそうな表情を浮かべる。
楪 千棘
もしかして、女のお前が凌久に勝てるとか思ってるわけ?
榎本 凌久
いい度胸してんな。
燎 颯斗
なぁ、榎本。
榎本 凌久
あぁ?
燎 颯斗
あのさ、榎本が矢野さんを脅して瀬山ちゃんをいじめさせてたって本当?
榎本 凌久
そうだけど?だったら何だよ。
平然と認めた凌久。
凌久の何とも思ってない様子に燎君がバンッと机を強く叩いた。


教室にいる人達は不安そうな顔で2人を見ていた。
廊下にも野次馬が集まり始めている。
燎 颯斗
何だよじゃないだろ!!!!!
いつも笑顔で楽しそうに笑っている燎君が初めて怒って、初めて怒鳴り声を上げた。
燎 颯斗
武力で脅して動かす?そんなの最低最悪の行為だし、いじめなんてもってのほかだ。
榎本 凌久
うっせー…そうだった。お前は昔から正義の塊でしか無かったっけ。てか、いじめのことを知らなかったお前も駄目なんじゃね?
燎 颯斗
気付けなかったことは今更だけど、申し訳ないと思うよ。でも、いじめが無ければ気付かなくてもいい。
燎君の正しい意見に「チッ…」と凌久がわざとか分からないが、大きな音で舌打ちをした。
榎本 凌久
ごちゃごちゃ…うるっせーんだよ!!
燎君との距離を詰めた凌久が胸ぐらを掴む。
そして、燎君が抵抗する前に殴ろうと手を振り上げたのだった…

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