第30話

断念
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2018/12/31 23:55
翌日、私は綾と昨日のことをめぐみに話していた。
本郷 めぐみ
へぇ!如月と空閑が…意外だね。
鈴木 綾
だよね!私もびっくりした!孤児院でボランティアしてたなんて…
桐山 桃香
落とせそうにないよ。
本郷 めぐみ
バイトじゃないならしょうがないし…
鈴木 綾
桃香と話した結果としてはあの二人は落とせそうにないって感じ。
本郷 めぐみ
諦めよっか。
めぐみも納得したのか苦笑いを浮かべる。
これで琉依と柚稀の1軍はキープ。
でも、女王にはなろうとしていないから私の下克上には今のところ、問題にはならない。
まぁ、ヤンキー系のカーストはこれで固定かな…。
そう思った時だった。
伊藤 雅
てかさ、やっぱし峰本って人をいじめて自分の地位を確認するクズみたいな女だよね。
3軍に落ちて静かになっていた雅が教室にいる人、全員に聞こえるような声量で話し始めた。
私達の隣に座って雪奈と話していた沙月が「は?」と信じられないといいたそうな声を漏らす。
如月 琉依
え、いまさら言ってんの?
空閑 柚稀
そうだよ、みや〜。それにクズみたいなじゃなくて実際にクズ女でしょ。
伊藤 雅
あ、そうだった。
如月 琉依
ほんとあのクズ女は一生、周りに持ち上げられる。それで喜ぶ口だけ女王様になるんだろうね。
伊藤 雅
いやいや、女王様は今だけで卒業したら周りから見捨てられてぼっちになるんだよ。
峰本 沙月
お前ら、何の話?
いつの間にか琉依達の席の前に立っていた沙月が、怒り爆発寸前の表情で琉依達を睨みつける。
伊藤 雅
クズ女の話。
峰本 沙月
は?何、お前。あのこと、先生に言っていいわけ?
伊藤 雅
別に言えば?もうバイトやめたし。
峰本 沙月
別にやめてもしてたって言うことだけでお前は退学だろ。
伊藤 雅
だから、言えばいいでしょ。言ってること理解出来ない?
峰本 沙月
馬鹿にしないでくれる!?!?
バチッ!!!
伊藤 雅
っ……
沙月のビンタが雅の頬を痛める。
如月 琉依
てめぇ…!
空閑 柚稀
琉依。
叩かれた雅を見た琉依が立ち上がり反撃に出ようとしたが、それを柚稀が止めた。
空閑 柚稀
最後は雅に任せよう。
如月 琉依
……分かった。
少し腑に落ちない表情を見せたもののスグに琉依は座った。
雅は無言で立ち上がると、沙月を睨む。
峰本 沙月
何よ。
伊藤 雅
…落ちろ、口だけ女王のクズ女。
バチンッ!!!!!
峰本 沙月
痛っ!!!
沙月が雅にビンタしたときよりも大きな音が教室に響き、沙月が尻もちをつく。
そこに…
先生
はい、おはよー。朝のホームルームを始め…って、どうしたの?早く座りなさーい。
伊藤 雅
どうしたの?早く座りなよ。
冷たい目で笑いながら沙月を見下ろす雅。
沙月を頬を押さえながら、歯軋りをして自分の席へと戻った。
朝のホームルームを綾、雪奈と話して聞き流すと、1番最後に……
先生
では、伊藤さん。
伊藤 雅
はーい。
そう言うと、雅が席を離れて教壇に立つ。
先生
挨拶を。
伊藤 雅
私、伊藤雅は今日でこの学校を中退させてもらいまーす。
桐山 桃香
えっ?
いきなりの中退発表にみんながザワつく。
広瀬 雪奈
えっ〜!?雅、いなくなるの!?
伊藤 雅
うん。将来の仕事のために夜中にバイトしてまで高校通ってたけど、柚稀が上手く繋いでくれたお陰で、柚稀のお父さんに雇ってもらったから辞める。別に仲良くしてくれた人とは休みの日でも遊べるし。
先生
伊藤さんのお話の通り、伊藤さんは今日で皆さんとお別れです。
伊藤 雅
今までありがとうございましたー。
軽くお辞儀をして顔を上げた雅。
その顔は清々しく、笑顔で沙月を見ていた。
まるで「お前らの言いなりにはならない。」とでも言うかのように……。

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