第21話

1軍の席
6,374
2018/12/10 08:51
雅が落ちてから3日間経った放課後。
峰本 沙月
新村。
新村 有咲
沙月ちゃん、どうしたの?
峰本 沙月
ちょっと来て。
呼ばれた有咲が沙月の机に向かう。
沙月と有咲が何かを話していると、それを横で見ていた雪奈達が…
広瀬 雪奈
ん?沙月、ちょい待ち。
鈴木 綾
確か、桃香ちゃんもいなかった?
本郷 めぐみ
そうそう。他の写真も見せてくれてたじゃん。
峰本 沙月
あー……そうだったね、桐山。
私も呼ばれ、沙月の机に向かう。
桐山 桃香
なに?
峰本 沙月
今回はアンタらのおかげで伊藤を蹴落とすことが出来たの。だから、私達のグループに入れてあげる。
新村 有咲
えっ!いいの!?
広瀬 雪奈
いいよいいよ〜、でもねぇ…
雪奈は少し困ったように首を傾げた。
広瀬 雪奈
大人数は要らないし、どっちかだけでいいよ。
桐山 桃香
……。
雪奈がそう言うと…
新村 有咲
じゃあ、私が入る!
峰本 沙月
あんなに桐山と仲が良かったのに?
散々「いじめっ子感」だの「地味」だの言って、私のことを嫌いと言った有咲にわざわざ沙月が問う。
新村 有咲
うん。だって、雅ちゃんのことを張り込む話を始めたのは私だし。だよね、桃香?
桐山 桃香
まぁ、そうだね。
新村 有咲
なら、私でいいでしょ?
沙月達の1軍に座れる席はただ1つ。
威圧をかけるような有咲の目から私をその椅子から蹴落とそうとしているのはスグに分かる。
………そんな好き勝手にさせるはずは無い。
桐山 桃香
いいんじゃない?沙月ちゃん達が自分の悪口を言う有咲といることが出来るなら。
峰本 沙月
は?それ、どういう意味?
桐山 桃香
有咲はいつも沙月ちゃん達の悪口とか言ってるんだよ。
私の発言に有咲の笑顔が歪んだ。
沙月も自分の悪口を言われてると思いたくないのか少し睨むような目で私を見る。
峰本 沙月
なら、証拠を出せよ。
新村 有咲
そ、そうだよ!!証拠も無しにそんな勝手なこと言わないでくんない!?
有咲が唾を飛ばしながら怒鳴る。
桐山 桃香
あ、いいんだ。ちょっと待ってね。
私は沙月の机を蹴り飛ばしたりした動画を見せようと思ったが、それは取っておいて、雅を尾行する時に喫茶店で愚痴っていた音声を流すことにした。
桐山 桃香
じゃあ、よーく聞いててよ。
そう言い、音量を最大にすると、スマホの再生ボタンを押した。
『じゃあ、"有咲"は"沙月ちゃん"のことどう思っているの?』


2人の名前を言う私の声が流れる。
『私?普通に大っ嫌い。雪奈ちゃん達もよくあんなのと付き合えるよね。私だったら絶対無理。てか、沙月ちゃんって読者モデルなだけでしょ?表紙を飾っていないのに何であんなに堂々と出来るの?マジ笑うわ。』
ペラペラと話す有咲の声。
顔を上げてみると、顔を怒りで真っ赤にする沙月とそれと逆に顔を真っ青にする有咲の姿。
桐山 桃香
これでどう?
峰本 沙月
…充分。疑って悪かったね。さてと…新村。どうやって落とし前をつけもらおうか?
沙月が目付きを鋭くし、有咲を睨む。
その威圧感からか、有咲は一歩後ろに下がる。
峰本 沙月
綾、めぐ。
沙月の声に綾とめぐみが動き、有咲の腕を掴んだ。
有咲が動けなくなったのを確認すると、沙月と雪奈が有咲の鞄を探り出した。
広瀬 雪奈
うわぁ〜、これ安物じゃん!
雪奈が化粧ポーチを漁りながらケラケラと笑う。
沙月も探りながら「よくこんなので来れるね。」と言って、蔑みの目で有咲を見た。
新村 有咲
お願いだからやめて!!
有咲が暴れるが、2人に腕を掴まれ動けない。
すると…
峰本 沙月
ん?……いいもの見つけた。
広瀬 雪奈
おっ!なになに?
峰本 沙月
これ。
そう言い、沙月がタバコとライターを取り出した。
広瀬 雪奈
うっわぁ〜!え、新村ちゃん、タバコやってたの〜!!ヤッバ〜!
手を叩き、お腹を抑えて雪奈が笑う。
そう言えば、有咲からいつもタバコの臭いがした。
本人に聞くと「親が家で吸うから移っちゃった」と言ってたけど…まさか、本人がしてたとは…。
峰本 沙月
どうする?先生に言ってもいいけど?
新村 有咲
やめて、ください……。
バチンっ!!!
いきなり、有咲の頬を沙月が叩く。
新村 有咲
っ…!
峰本 沙月
伊藤の件もあるから今回はこれくらいで勘弁してあげる。次、こんなことがあったらタバコのことは先生に言うし、こんくらいじゃ済まないから。
それだけを言うと、沙月は鞄を持ち、教室を出る。
それを見た、綾とめぐみも有咲の腕から手を離して教室の外へ。
広瀬 雪奈
ん?どうしたの?行こっ!
何をしたらいいかが分からない私は、雪奈に腕を引かれて、有咲を置いたまま教室を出た。
1軍の席に私は座ることが出来た。
でも、多分有咲は3軍のままになる。
まだまだ……もっと確実に蹴落とさないと。
そして、私は1軍派手系に入ることになった。

プリ小説オーディオドラマ