カランコロン
やっぱり、この空間が楽しい。
さっきのことは、水に流そう…
でも、もしまた同じようなことがおきたら?
今回は、せらとアキラが助けてくれたけど、同じようなことがまた起きたとして、また助けてくれるとは限らない。
どうして、わかったんだろう
…私のこと、考えてくれたんだ、
心配してくれたんだ。
言っていいのだろうか、
たとえここまで仲良く話せるようになっても、あくまで他人。
関係ない人を巻き込んでいいんだろうか、
そうは見えないけど、もしかしたらあの先生側の考えを持ってるかもしれない。
人はわからないもの。
でも、この人ならわかったくれるんじゃないかって、期待してしまう。
でも、いうのがこわい
コトンッ(机に置く音)
こんなに優しい、暖かくしてくれるのに、頼れない私が、
本当に憎くてしかたない。
昔からせらとアキラにも守られてばかり
みんな手を差し伸べてくれるのに、素直に受け取れない。
雲雀さんがくれたココアを一口のんだ。
奏斗さんの優しい「おいで、」の一言に対して、私はうなずくことしかできなかった。
私は今日あったことをすべて話した、
教師に密室に閉じ込められたこと、幼馴染に助けられて、今は早退してそのまま来たということ。
優しいなぁ、
ずっと、ここにいたいなぁ、
この暖かさに、ずっと触れていたい。
そこから、私はひたすら泣きじゃくった。
今日だけで、身体中の水分が溢れたのではないかってくらいに、泣いた。
そんな私を、奏斗さんは抱きしめ、雲雀さんは頭をずっと撫でてくれた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。