第2話

第2章
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2019/04/22 09:01
私が行きたいと言っていたレストラン。

母は少しは私に気を使ってくれたようだ。

少しだけドレスアップした私たち母子。

テーブルを挟んだ向こうには、こちらもまた畏まった様子の父子三人。
お義父さん
ユウリちゃん、大学合格、おめでとう
柔らかい口調で、大畠さん……いや、お義父さん、は、微笑んでくれる。
お母さん
ふふ、ユウリ、おめでとう
母も、同じく綺麗に微笑む。
ユウリ
ユウリ
あ、ありがとう……
お義父さん、の前じゃ、こんな感じなのか……

母の様子を窺いながら、自分に注目されている居心地の悪さをどうしよう、と内心焦っていた。

そんな私の様子に気付いたのか、すかさず助け船が。
大畠  ハヤタ
大畠 ハヤタ
ユウリちゃん、大学決まってよかったね、おめでとう。
お父さんとナミさんも、結婚、おめでとうございます。

あの、ナミさん……いや、お義母さん……
大学三年生のお義兄さん、のハヤタさん。

お義父さんに似た笑顔を浮かべていたが、スッと引き締め改めて母に向き直る。
大畠  ハヤタ
大畠 ハヤタ
男所帯が長いせいでご迷惑かけることも多いかもしれませんが、これからもどうぞ宜しくお願いします
綺麗な所作で頭をさげ、きちんとした挨拶をしてくれるところは、さすがだな……と感心した。
大畠  ハヤタ
大畠 ハヤタ
ユウリちゃんも、よろしくね。
困ったこととか、こうして欲しいとかあったら、遠慮なく言ってね。
言ってくれた方が助かる
年下の私にも、気さくに欲しい言葉をかけてくれるハヤタさん。
ユウリ
ユウリ
あっ、はい!
ありがとうございます。

こちらこそ、宜しくお願いします……
きっとモテるんだろうな、カノジョいるんだろうな……

そんなことをぼんやり考えていると、前菜が運ばれてきた。
大畠  ハヤタ
大畠 ハヤタ
それじゃ、まず乾杯しましょうか
今回は私の合格祝い、兼、両親の結婚祝いなので、必然的にハヤタさんが仕切ることになる。

グラスを挙げてドリンクをいただき、一息吐いた。

ちらり、と、斜め前の席を窺う。

……さっきから一言も発しない、ショウタくん。

目はあさっての方を向いたまま。
大畠  ハヤタ
大畠 ハヤタ
……ショウタ、お前もちゃんと挨拶しろよ
見兼ねたハヤタさんがたしなめる。

わざとらしく大きな溜息を吐いて、ショウタくんは私たちを一瞥した。
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
……ヨロシクオネガイシマース
棒読み。
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
てか腹減った。もう食っていい?
お母さん
あ、そうね、せっかくのお料理、美味しくいただきましょう
母も空気を変えるように、慌てて同意する。

ショウタくんはすかさず手を合わせた。
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
いただきます
ユウリ
ユウリ
(あ……)
そうだ。

思い出した。

ショウタくんはおやつなんかを食べる前、いつもきちんと手を合わせて「いただきます」をしていた。

目の前のショウタくんと重なる。

食べ方もきれい。

久しぶりに会ったショウタくんはチャラい印象だったけど、変わってないところもちゃんとある。

私が好きだったところ。

少しだけ安心したからつい、にやけてしまう。


怪訝そうなショウタくんと一瞬、目が合った。

慌てて口元を引き締めたけど、すぐにふいと逸らされた。

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