第10話

可愛い悪魔と遊佐くんの正体
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2018/12/07 09:02


天使? いや紳士?
自然と顔がほころんでしまう。
翔
ハンカチはあげる! 
かえさなくてだいじょうぶだよ!
心美
心美
いいの? ありがとう!
翔
ね、ぼくのねえちゃになって!
こんな、えがおのかわいいねえちゃ、
ほしかったんだ!


ズキューン。心臓にハートの矢が刺さった。
心美
心美
(幼稚園児なのに、恐るべし…!)

可愛さに油断をしていると、
急にスカートを捲られ、胸をガッと触られる。

心美
心美
わ?! なに?!

犯人はもちろん、私の周りをくるくると走る双子。

ため息をついた遊佐くんが双子を捕まえた。
遊佐
遊佐
お前らやめろ
心美
心美
ゆ、遊佐くん…(今度はちゃんと叱ってくれ――)
遊佐
遊佐
こいつに触るとバカが移る
心美
心美
(くっ……やっぱそうだよね…)
遊佐
遊佐
こいつら可愛いだろ? 
陸と渚。で、このちっこいのが翔!

翔くんを抱き上げ、頬ずりする遊佐くんは
もうデレッデレだ。
心美
心美
(遊佐くんの笑顔、可愛い……。あっ!笑うとエクボができるんだ。それにいいなぁ、あんな風に頬ずりされたい!!)

スケベ心がチラチラと顔をだしてくる。
心美
心美
(だめ!スケべは封印!スケべは封印!)
心美
心美
えっと、4人兄弟?
遊佐
遊佐
いや、5人。親が離婚して、
兄貴は母親についてったんだ
心美
心美
そ、そうなんだ……
遊佐
遊佐
なんて顔してんだ、お前。
俺らは寂しくなんてない。だろ?

顔を見合わせ頷いた双子達は遊佐くんに抱きついた。
遊佐
遊佐
よーし、今日はお前らの好物作ってやる


そう言ってキッチンに向かう遊佐くんはまるでお母さん。いわゆるオカン男子だ。

普段面倒見がいいのも納得できる。

でもリビングに残された弟たちは少し寂しそう。

私は小さく手招きした。
心美
心美
ここだけの話、
お姉ちゃんも親と離ればなれなんだ
陸
そうなの?
渚
どうして?
心美
心美
天国にいるんだよ
翔
さみしくない?
心美
心美
寂しくないよ! 
よし、じゃあ諸君には特別に助平家の
秘術を教えよう!


私達は更に小さな輪になって話す。

心美
心美
どうしても、どうしても寂しいときはね
スケベなことを考え―――


ごつんと脳天に衝撃が走った。
振り返ると鬼、じゃなくて遊佐くん。

遊佐
遊佐
子供になんてこと教えてんだ!
心美
心美
いったーーー! 
ごめん、つい……
遊佐
遊佐
教育に悪いだろ!


するとびっくりした翔くんが急に泣き始めた。
翔
にいちゃがおこったーーーー!!
遊佐
遊佐
翔、違うんだ、これはこのバカに
心美
心美
ご、ごめん、遊佐くん! 
私のせいでーー


遊佐くんはギロリと私を睨み、翔くんを慰める。


すると突然雷が鳴り、天候は急変。
そして雷で騒ぎ出す双子達。
心美
心美
遊佐くん! 雨! 
外に干してるの洗濯物だよね?!
遊佐
遊佐
今手が離せないから
責任持ってお前が取り込んでこい!
心美
心美
は、はい!!

慌てて外に飛び出した私は、
急いで洗濯物を取り込んでいく。
心美
心美
(よし、後は下着だけか)
心美
心美
……って下着?!
スケベ心
スケベ心
ドンドコドコドコドコ!!!

下着と聞いて、スケベ心達が騒ぎ出す。


そして、たぶんそこにぶら下がっている
ボクサーパンツは遊佐くんのもの。
心美
心美
(こ、これはただの家事!たとえよこしまな気持ちがあったとしても許される!!)

謎の言い訳を心の中で繰り返しながら、丁寧にパンツを洗濯バサミから外す。


打ち付ける雨の中、
こっそりと遊佐くんのパンツを観察する。


心美
心美
ん? 待って、このパンツ!

それはどこか見覚えある形のボクサーパンツ。
心美
心美
(これ、雑誌でritoリトが着用してたような……。そう、この形。抵抗のないゴムと、計算しつくされた3D構造)


ritoリトとは、なにを隠そう私の大好きな
セクシーモデルだ。
心美
心美
(でも、これ、確かメーカーがritoリト専用に作った下着じゃ……)
遊佐
遊佐
気づくのおせーよ

振り返ると、そこにはritoリトがいた。

濡れた髪は緩くウェーブし、ちらりと覗く刈り上げがそのセクシーさを増している。
心美
心美
( ritoリト?!)


追いつかない思考の中、鼓動だけが早くなる。


すると彼は強引に軒下へと私を連れ込み、
壁へと押し付けた。

光る稲妻に照らされたritoリトは紛れもなく
遊佐くんで―――。
心美
心美
(遊佐くんがritoリトなの?!)

ショート寸前の私を覗き込むように
遊佐くんは唇を寄せる。

その距離わずか5ミリ。



彼の濡れた髪から、火照った私の頬に
冷たい水滴が落ちた。




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