第6話

雨と遊佐くんと透けたYシャツ
5,942
2018/11/09 09:01


雨の降る放課後の校舎裏。

後ろには壁、目の前には怒った顔のさっちょん。


背中にはじっとりと汗がにじむ。

心美
心美
……さっちょん
な、なんでしょうか
紗季
紗季
ねぇ心美
……私達って友達だよね?
心美
心美
……うん
紗季
紗季
じゃあなんで隠し事するの?
心美
心美
え?!
心美
心美
(すけべなのバレてる?それとも遊佐くんを尾行してること? …どっち?!)
紗季
紗季
付き合ってるんでしょ
ヒカルくんと
心美
心美
へ?!
紗季
紗季
どうして言ってくれなかったの? 
私、隠し事はだいっきらいなのよ!
紗季
紗季
私は譲らないからね
宣戦布告よ!
心美
心美
……え? さっちょん、待っ
紗季
紗季
心美が友達だからって遠慮しないから!
ヒカルくんは奪ってみせる! 
じゃ、それだけ!

そう言い残しさっちょんは雨の中を走り去っていく。




心美
心美
……さっちょん、それは違う

私の言葉は悲しくも雨の音にかき消されてしまった。



そういえば私
さっちょんに大事なことなにも話してない。

誤解だけどさっちょんは宣戦布告なんて言いづらいこと、はっきり言ってくれたのに……。



とぼとぼ雨の中を歩いていると、急に雨が止んだ。


いや違う、これは傘?
遊佐
遊佐
風邪引くぞ
心美
心美
ゆ、遊佐くん!?
遊佐
遊佐
どうした? 元気がないな

ぐっと顔を寄せ、私を覗き込む遊佐くん。

心美
心美
(な、近い! しかも同じ傘の下、これって相合い傘?!)
遊佐
遊佐
大丈夫か?
心美
心美
(あ、男の人って喉仏がすごくセクシーなんだ。……ってどこ見てるの私!)
心美
心美
大丈夫! 
全然、ちっとも、なんともないです!

恥ずかしさから傘の中から逃げ出すと
遊佐くんに腕を掴まれる。

心美
心美
わ!

掴まれた場所から遊佐くんの体温が伝わってきて
心拍数が上昇する。
遊佐
遊佐
せめて傘だけでも持っていかないか?
心美
心美
でもそれじゃ遊佐くんが濡れちゃうよ!

傘を差し出してくる遊佐くんは
それはそれは頑固だった。


打ち付ける雨の中、しばらく傘を押し付け合う。
心美
心美
(濡れた遊佐くんの髪、色っぽい。 
ああ、遊佐くんのYシャツが雨に濡れて……)
スケベ心
スケベ心
ドンドコドンドコ!!!

私のスケベ心が太鼓を叩き始める。

心美
心美
(ああ!シャツが張り付いて肌の色が透けて……遊佐くん下に何も着てないの? ダメ!見ちゃダメ!! でも見たい!!)
スケベ心
スケベ心
ドンドコドコドコドコ!!!!!
ツーー、と鼻血が垂れるのがわかった。


すると急に手首を引かれ、さっきより近い距離に遊佐くんの顔。
遊佐
遊佐
おい、いい加減にしろ

いつもより低い声と、荒い口調。
遊佐くんの吐息が耳にかかる。


心臓はバクバクと体中に血液を送り始める。
スケベ心
スケベ心
……
心美
心美
(あれ……おかしいな。このドキドキ、スケベ心じゃない……?)
遊佐
遊佐
ああ、もうめんどくせぇな!
明日放課後5時、屋上に来い
心美
心美
え?
遊佐
遊佐
一人で来いよ? 傘はその時返せ!
じゃあな!

遊佐くんは傘をその場に置いて走っていった。



心美
心美
……え、今の遊佐くんだよね?



鼻血が雨で流れていくのを感じながら
私は呆然と立ち尽くした。



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