昨日、遊佐くんの部屋から飛び出して、
そのまま逃げるように家に帰ってしまった。
だけど、あれ……あれ?
ギシリと私のスプリングを軋ませ裸の遊佐くんが身を起こす。
おしりの筋肉が私の腹部にダイレクトタッチ。
こんなの鼻血待ったなし!
でもベッドから鼻血は出ないから安心だ。
鼻血も声も出ないから思い切り興奮できる!
と息を荒くしているとーー。
彼女のボン・キュッ・ボンのスタイルはエプロン一枚でも着こなすみたい。
私の上、つまり遊佐くんの隣に腰を降ろし、美脚をするりと組む。
叫ぶ声は届かない。だって、ベッドだから。
今、私のおかゆ不味いって言った……?
泣きそう。
少し目を離した隙に、遊佐くんはイズミさんをベッドに押し倒した。
叫んでも声は届かない。
微かにギシギシとスプリングが音をたてるだけ。
それはそれで逆にスケベだ。
そしてそのまま
二人の身体は徐々に重なり合ってーー。
でもそこは遊佐くんの部屋ではなく
夕日の差し込む教室。
なぜわかった!? さすがさっちょん。
今さっきのスケベ悪夢のことはもちろん、
遊佐くんへの恋心、遊佐くんの好きな子の話も、
さっちょんにはすべてを打ち明けた。
勢いよく立ち上がってスクールバッグを引っ掴み、
走りだす。
私は走った。
そうか、遊佐くんに好きな子がいたって
私は遊佐くんが好き。
スケベ心たちも私の背中を押してくれている。
今こうしている間に、イズミさんとスケベな展開になっているかもしれない。
私は勢いよく遊佐家のインターホンを鳴らした。
ドアを開けたのは、遊佐くんでもイズミさんでもなく、まさかのヒカル会長。
キラキラで真っ白なエプロン姿。
世の女子が見たら卒倒しそうな眩しさ。
ヒカル会長はすっと無表情になり、
ドアを閉めようとする。
ぎりぎりとドアノブの引き合いが始まる。
会長の力が弱まったのかドアが勢いよく開く。
そのせいで後ろに倒れそうになった私を、
とっさに会長が庇うように倒れて――。
視界がグルンと回転した。
そして目を開くと覆いかぶさるように会長の顔面、
唇と唇のキョリ3センチ。
ヒカル会長の腕が私の頭を庇うように支えている。
でも会長が急に赤面し身を引いたせいで軽く後頭部を打った。
心底心配そうな顔で、私を抱き起こす会長は真っ白なエプロンを着た執事みたい。
すごく優しくて紳士だ。
今までに見たこともない表情だった。
薄く染まった頬と真剣に潤んだ瞳。
目元は少しだけ遊佐くんに似てる。
そんな呑気なことを考えていると、耳元で甘い声が響いた。
気づくと黒いオーラを纏った遊佐くんが立っていた。
怒気のこもった声と共に、遊佐くんは会長の腕を掴み私から引っ剥がした。
睨み合う二人のバックには黒豹と大蛇が見える。
遊佐くんは、ガシっと私の腕を掴む。
そう言って彼は会長をギロリと睨み、
私を強引に部屋へと引っ張っていった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。