第24話

ライバルにはスケベな看病させません!
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2019/03/15 09:01


昨日、遊佐くんの部屋から飛び出して、
そのまま逃げるように家に帰ってしまった。

だけど、あれ……あれ?
心美
心美
(なんで私、遊佐くんのベッドになってるのー?!)


ギシリと私のスプリングを軋ませ裸の遊佐くんが身を起こす。
心美
心美
(は、裸!? それに全裸ーー?!)
スケベ心
スケベ心
わっしょーーーい

おしりの筋肉が私の腹部にダイレクトタッチ。

こんなの鼻血待ったなし!
でもベッドから鼻血は出ないから安心だ。
心美
心美
(遊佐くんの中殿筋の感触が……
くうぅ、背筋も綺麗!あんなところ
にもホクロがぁあ!)

鼻血も声も出ないから思い切り興奮できる!
と息を荒くしているとーー。
イズミ
イズミ
理人~、おかゆつくって来たよ~
心美
心美
(イズミさん…?って裸エプロン?!)

彼女のボン・キュッ・ボンのスタイルはエプロン一枚でも着こなすみたい。

私の上、つまり遊佐くんの隣に腰を降ろし、美脚をするりと組む。
心美
心美
(ひいっ、私の上に乗らないで!
しかも何その絶妙なスケベ仕草?!)
遊佐
遊佐
イズミのおかゆは美味そうじゃん
イズミ
イズミ
でしょ~、はいあーーん
心美
心美
(それ、私がやりたかったのにーー!)

叫ぶ声は届かない。だって、ベッドだから。
遊佐
遊佐
ん、美味い
どこかの誰かさんとは大違い
イズミ
イズミ
えー、あんなのと一緒にしないで

今、私のおかゆ不味いって言った……?

泣きそう。
遊佐
遊佐
でも俺は、おかゆよりお前が食いたい

少し目を離した隙に、遊佐くんはイズミさんをベッドに押し倒した。
心美
心美
(ぎゃああああ!何をする気?!
私の上で何をする気なの?!)

叫んでも声は届かない。
微かにギシギシとスプリングが音をたてるだけ。

それはそれで逆にスケベだ。
遊佐
遊佐
いただきます
イズミ
イズミ
召し上がれ

そしてそのまま
二人の身体は徐々に重なり合ってーー。
心美
心美
ちょっと待ったああああ!!
あ、声でた

でもそこは遊佐くんの部屋ではなく
夕日の差し込む教室。
紗季
紗季
心美……もう放課後だよ
あんた1限からずっと寝てたでしょ!
心美
心美
え、夢?! 
夢かぁあ~……よかった
紗季
紗季
どうせスケベな夢でも見てたんでしょ
話してみ?

なぜわかった!? さすがさっちょん。

今さっきのスケベ悪夢のことはもちろん、
遊佐くんへの恋心、遊佐くんの好きな子の話も、
さっちょんにはすべてを打ち明けた。
紗季
紗季
で、心美はもう遊佐のこと嫌い?
心美
心美
ううん……好き
紗季
紗季
だよね、なら答えは一つ
遊佐に好きな子がいても、
自分の"好き"を信じて前進あるのみ!
心美
心美
そっか……
そうだよ、私行かなきゃ!

勢いよく立ち上がってスクールバッグを引っ掴み、
走りだす。
紗季
紗季
心美、もしダメでも慰めてやんよ!
心美
心美
さっちょん、ありがと!

私は走った。

そうか、遊佐くんに好きな子がいたって
私は遊佐くんが好き。
心美
心美
(なら、まずはあんなスケベな看病は
絶対阻止しなきゃ!)
スケベ心
スケベ心
阻止阻止ーー!

スケベ心たちも私の背中を押してくれている。

今こうしている間に、イズミさんとスケベな展開になっているかもしれない。

私は勢いよく遊佐家のインターホンを鳴らした。

ヒカル
ヒカル
はい、どちら様ですか?

ドアを開けたのは、遊佐くんでもイズミさんでもなく、まさかのヒカル会長。

キラキラで真っ白なエプロン姿。
世の女子が見たら卒倒しそうな眩しさ。

ヒカル
ヒカル
……心美ちゃん?
なんで家に?
心美
心美
ヒカル会長こそ…
ヒカル
ヒカル
今日は陸と渚に呼ばれてさ
ほら、アイツが寝込んでるから
心美
心美
遊佐くんやっぱりまだ寝込んでるんだ…
ヒカル
ヒカル
で、なんの用かな?
心美
心美
遊佐くんのお見舞いに!
ヒカル
ヒカル
へえー、じゃあね

ヒカル会長はすっと無表情になり、
ドアを閉めようとする。
心美
心美
ちょっと!
なんで閉めるんですか!

ぎりぎりとドアノブの引き合いが始まる。
ヒカル
ヒカル
気に入らないんだ!
アイツの為に来たんだよね?
心美
心美
そうですよ!!
そんなに遊佐くんが嫌いなんですか?
ヒカル
ヒカル
違う!
アイツじゃなくて…
僕は心美ちゃんがっーー

会長の力が弱まったのかドアが勢いよく開く。

そのせいで後ろに倒れそうになった私を、
とっさに会長が庇うように倒れて――。

ヒカル
ヒカル
うわ!!
心美
心美
ぎゃっ!

視界がグルンと回転した。

そして目を開くと覆いかぶさるように会長の顔面、
唇と唇のキョリ3センチ。
スケベ心
スケベ心
ラッキースケベチャ―ンス!!

ヒカル会長の腕が私の頭を庇うように支えている。
ヒカル
ヒカル
うわ、近っ!

でも会長が急に赤面し身を引いたせいで軽く後頭部を打った。
ヒカル
ヒカル
……ってごめん!
だ、大丈夫?

心底心配そうな顔で、私を抱き起こす会長は真っ白なエプロンを着た執事みたい。

すごく優しくて紳士だ。
心美
心美
あ、ありがとう
ヒカル
ヒカル
心美ちゃん……あのね、

今までに見たこともない表情だった。
薄く染まった頬と真剣に潤んだ瞳。

目元は少しだけ遊佐くんに似てる。

そんな呑気なことを考えていると、耳元で甘い声が響いた。
ヒカル
ヒカル
僕、心美ちゃんのことーー
遊佐
遊佐
お前ら何してんだ…

気づくと黒いオーラを纏った遊佐くんが立っていた。
ヒカル
ヒカル
邪魔しないでくれる?
遊佐
遊佐
あぁ?

怒気のこもった声と共に、遊佐くんは会長の腕を掴み私から引っ剥がした。
ヒカル
ヒカル
聞こえなかった?
今僕と心美ちゃんが話してるの、
関係ないヤツは黙っててほしいな
遊佐
遊佐
あ?
関係あんだよ!

睨み合う二人のバックには黒豹と大蛇が見える。
ヒカル
ヒカル
いつも僕のものを片っ端から奪ってさ、楽しい?
遊佐
遊佐
はあ? 
お前が勝手に勘違いしてるだけだろ!
そもそもこいつはお前のもんじゃねえ
ヒカル
ヒカル
そうだよ
でも理人のものでもないよね
遊佐
遊佐
そんなこと痛いほど分かってんだよ
でもな、こっちは小学生の頃から
ずっと好きなんだよ!
遊佐
遊佐
こいつは俺の初恋のっ―――
ヒカル
ヒカル
……は?!
心美
心美
……へ?!
遊佐
遊佐
あー、もう面倒くせえな

遊佐くんは、ガシっと私の腕を掴む。
遊佐
遊佐
今日からこいつ俺のにするから


そう言って彼は会長をギロリと睨み、
私を強引に部屋へと引っ張っていった。




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