森の中をいくら探しても、はるなちゃんは見つからない。
あの手紙をもらってから30分がたっている。
残り30分……
はやくしなきゃ!
コンタが俺になにかを訴えているように見えた。
すると、コンタがぴょんぴょん跳ね出した。
何してるんだろう?
コンタが鼻をクンクンするそぶりを見せた。
あたりみたいだ。
じゃあ、はるなちゃんのにおいが付いているものが必要か……
本当にわずかなにおいだけど、僕の手にまた匂いついてるかな?
俺は手を差し出した。
わかったみたいだ。
僕は、コンタの後を追った。
ついた先は、古い館だった。
コンタの反応的にここで間違い無いみたいだ。
にしても、お化けが出るんじゃ無いかってぐらいボロボロだ。
こんなところに本当にはるなちゃんがいるのかな?
俺たちは、古い館の中に入っていった。
中はとても暗く、昼間のはずなのにカーテンで光が差し込まないようになっている。
シーン……
応答はない。
俺とコンタは館の中をうろつきまわった。
すると、あるドアを見つけた。
古そうなドア。
ちょっと怖いけど、もう時間がない。
俺はドアに手を伸ばした。
そして、ドアを開けた。
そこには、横長の大きな垢があった。
俺はすぐさまその垢に駆け寄った。
そこには、死んだように眠っているはるなちゃんがいた。
返事がない。
そういえば、手紙には『お姫様を起こすにはキスをしなくてはならない』って書いてあった。
キス!?
はるなちゃんに!?
さっき会ったばかりなのにそんな事していいのか?
それに、ひかるくんだってはるなちゃんのこと……
いや、そんなこと言ってる場合じゃない。
もう時間がない。
この子の命がかかっている。
俺は目をつぶり、はるなちゃんのくちびるに俺のくちびるをくっつけた。
柔らかい感触が唇に当たっている。
すると、はるなちゃんの周りが光り出した。
すると、はるなちゃんの手がピクンと動いた。
はるなちゃんが目を覚ましたのだ。
俺は思わずはるなちゃんに抱きついた。
俺の目からは涙が溢れて来た。
すると、はるなちゃんが俺の頭をぽんぽんして来た。
はるなちゃんがニコッと笑った。
ドキッ!
なんだ?今の感覚は……
俺たちは、この館から出ていった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。