マンションのエレベーターで、どんどん上へと上がっていく。
【喜多川金融】CMでも街の広告でも、新聞でも。必ず毎日目にするであろう、日本で最も有名な金融会社。
───チーン
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第四話
ドS季織くん
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季織くんの指さした、紅色のいかにも高級そうなソファに腰掛ける。
私は光の速さでお尻を浮かして立ち上がった。
心臓が持ちません。
ん?心做しか、季織の顔が赤いような...
あれ?季織のことだから絶対笑うと思ったのに...
目の前に出されたのは、紛れもない珈琲だった。
ん?ん??
な、なんで?? あれ?私もしかして脳内で会話してた?
実は今珈琲の話してなかった!?
恐る恐るカップを手に持ち、中の液体を見てみる。
もしかしたら、これは本当はお茶で珈琲に見えるだけ...!?
一口...飲んでみよう...
くそぉ...騙されたっ!!
季織は優しく笑って私の頭に手をポンポンとすると、ちゃんと緑色をしたお茶を出してくれた。
私が口付けたカップ、という前に季織は珈琲を一口飲んでしまった。
季織はカップに口を付けたまま、ニヤリと笑った。
わかった。
クールな時雨 季織は、
ドS季織だったんだ...!
もしかして、季織ってドS...?
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第四話 [完]
次回▶︎第五話
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。