「えー この公式を当てはめると 答えが出る」
つまらない数学の時間。
私は ただ先生が書いている黒板を自分のノートに写すだけの作業をしていた。
ブーブー
スカートのポケットに入れていた スマホが
揺れたのが分かった。
送り主は誰かなんて分かってる。
私が 女子高生みたいにメッセージをやりとりする相手はただ1人なのだから
先生にばれないようにチャットを開く。
件名: 眠い
昨日、夜中まで作業してたからさすがに眠い
学校に遅刻したしな
このメッセージを送ってきたのは、2年前から
やりとりをしている いわゆる ネッ友。
2年前は色々あって 心がすこし落ち込んでた時も 彼の言葉で度々元気をもらっていた。
彼は イラストレーターで、絵本を書いている
その絵も、優しくて暖かくて私はすっかりファンになってしまっていた。
昨日もどうやら、その締切で徹夜だったみたい
お互い 本名だって顔だって知らない。
だけどまるで近くにいるような……そんな気持ちになる。
私は彼とメッセージのやりとりをする時が1番生きてるって感じる。
私は、返信を送信し 板書が進んでいることに気付き慌てて ノートに書き写し始めた。
隣で、ブーブーと 携帯が震えていることにその時はまるで気づく余地なんて無かった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。