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第1話

謎の雨粒 《1話》
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2019/03/17 05:40
*     *     *      *       *       *

青空の下…見慣れている光景の中、私は、川へ足を踏み出した。

『冷たや!』

まだ小さな手で川の水をすくう。
指と指の間から少しずつ水が落ちて…だんだん手の中にある水が減っていく。
『綺麗な川だね!』


と微笑みながら、振り返ると そこは私と同じ年の男の子がいる。


『だろ!?』


その子は、太陽が照らす下で白い歯を見せた。
私も、その子も裸足になって遊びまくった。

私もこの後大きくなってもまたここに来るって…。
この川に来るって思っていたー。


その時の私は、輝いていたと思う。




* * * * * *
莉緒
莉緒
暑っー。やっと終わった
現在、中学2年生。

青空が広がり…太陽がざんざんと照らす昼…。


ただいま、一学期の終業式が終わったところだ。
毎度毎度…校長先生の話は長くて参っちゃう。

暑い中…体育館でみんな集まり、あぁ思い出しただけで暑苦しい。
莉緒
莉緒
さっさと帰ってアイス食べよっと
流れる汗を手で拭きながら帰り道を歩く足が少しだけ早くなっていく。


早く家に帰りたい。早く家に帰りたい……。





私は、《引きこもりがち》の女子中学生です。

必要な数だけ学校に行くけど…。
休日は、絶対に外には出かけないのです。


あぁ、小さい時はよく出かけていたんだけど…。大きくなるほど出る回数が減ってきたな。


家の中でも自分の部屋に引きこもり…ゲーム、漫画…アニメ…。

好きなことばかりしているダメ生徒です。(良い子は真似No!!)
ーーーーーーーー。
ーーーーーーーーーーー!
ーーーーーーーーーーーーーーーー!?
何か起こりそうな予感がして私は、足を止めた。
莉緒
莉緒
…うん?
ーーーーーーーー!…。
莉緒
莉緒
…上?
顔を上げた瞬間…雲一つもない青空から、1粒の雨が落ちてきた。
莉緒
莉緒
わっ!?
そのまま、私のおでこに当たり…地面に落ちた。
莉緒
莉緒
雨…!?
濡れたおでこを拭こうと手でごしごしとしたが…濡れた感覚はなかった。
莉緒
莉緒
濡れてない…
濡れてない手から…足元へ目を移す。

そこには、雨粒が落ちて濡れているはずの地面…







じゃなかった。

そこには、綺麗な滴の姿を1つの雨粒があった。
莉緒
莉緒
え、なんで地面に染み込まないの?
しばらくその雨粒を見つめていたが…何も変化はなかった。

念のためにもう一度顔を上げた。

しかし…そこに広がっているのは青空…。
莉緒
莉緒
何故?
また雨粒と睨めっこし、考え込む。
莉緒
莉緒
まぁ、どうでもよくね!?
考えたとこでなんも得にはならないし。

暑い!!早く帰ろっと!

そう思い…雨粒を無視して歩き出した途端…

小さな雨粒から、透明な手が2つ出てきたと思うと…歩きかけの私の足を掴んだ。
莉緒
莉緒
うわっ!?
ゴン!!!





そのせいでバランスが崩れて…私の顔は地面に打ってしまった。
莉緒
莉緒
痛ぁぁぁぁぁぁぁあい!!!
すぐさま、顔をべたべたと触るが…血は出てなかった。
莉緒
莉緒
良かった……、じゃない!!!!
鬼のような顔をして振り返ると…私の足を掴んだままの雨粒がいた。

ちょっとだけ…大きくなっている?
そして…ちょっと悲しそうに見えた。


ちょっと驚いたけど…気にしないで私は怒鳴った。
莉緒
莉緒
って…いつまで掴んでいるのよ!バケモノ!
そう叫ぶと、雨粒のバケモノは((ビクッ))と怯えたかと思えば…さっさと手を離し…


逃げていった。
莉緒
莉緒
ちょっ…!?ちょっと待ちなさいよ!
なんだ、あの謎のバケモノは……。


絶対に……






逃がしてたまるか!!
私も、立ち上がり…赤くなったおでこをさすりながら追いかけたー。



《それがちょっとした追いかけっこの始まりだったー。》



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