帰ってきた。
こんな夜遅くに、
お仕事疲れてるのに
上司に誘われたからって、
そんなに飲まなくても。
んで、酔っ払いすぎだよ
私は酔って帰ってくる彼が嫌いだ。
ガチャ
結構お酒のにおいってするもんだな
彼はきゅっと締めたネクタイをつかみ、
くいっ、くいっ、と緩めた
仕草はかっこいいのに、目はとろんとしている
都合が悪いからって、黙らすのかㅋ
テレビの部屋は、リビングのこと。
私と彼はカーペットの上に寝転んだ
お酒のにおいは変わらない。
こちらが酔いそう
寝転びながら、抱き寄せてくる彼が
とてもかわいらしくて、彼の髪の毛を
クルクルしたり、わしゃっと触る
酔ってるなぁ
彼は急に私の目を見つめて、
キスをした
少しいつもより激しい
ニコッと笑ってきた
目はさっきよりとろんとしている
これは、
あれだ。
寝るんだな
小さな寝息が首元にかかってくすぐったい
だから、私はお酒を飲んで帰ってくる彼が
いやだ。
じらしてくるから。
彼が酔って帰ってくる日、
じらしてくる彼のせいで、
私は一人、部屋でシてしまう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!