第17話

第三章 もう一人の、彼-6
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2018/11/14 01:23
長谷部鈴
長谷部鈴
(……う~~ん)
昼からの授業が始まったけど、私は午前中にもまして上の空だった。
折坂くんの言ったことを、ノートに書いてまとめてみる。
何だかよくわからないけど……。
折坂くんの言うことが正しいんだとしたら、折坂くんの意識がない時に私は、彼に告白された…って、こと?
それって夢遊病とか……多重人格ってことに、なるんだろうか?
でもじゃあ、私に告白したのは一体誰ってことになるの?
折坂くんであって、折坂くんではなくて──。
そもそも一体、何の目的があって私に告白なんかしたんだろう……。
長谷部鈴
長谷部鈴
(っ、あーもー! 全っ然、訳わかんない!)
この数日でハゲるくらいに色々考えすぎて、私の頭は爆発寸前だった。
持っていたシャーペンでノートの1ページをぐしゃぐしゃと塗りつぶし、ガバッとその上に顔を突っ伏す。
……どうしよう。
多分、次の中間試験、私きっとボロボロだ……。






折坂孝平
折坂孝平
三浦って、委員会全然、顔出さねーの?
教室の前で私を待っていた折坂くんが、ドアから出てきた私に向かってそう聞いてきた。
薄暗くなり始めた廊下を、私達はどちらからともなく屋上へ向かって歩き始める。
長谷部鈴
長谷部鈴
……うん、まぁ。しょうがないよ。三浦くん、野球部のエースだし
折坂孝平
折坂孝平
……ふーん
苦笑しながら言う私に、折坂くんはどこか物言いたげな視線と相槌を投げてよこした。
だけどそれ以上は何も言わず、無言で私の前を歩いて階段を上り始める。
扉を開けると、サアッと冷たい風が目の前の折坂くんの襟足を揺らせた。
昼間はポカポカと暖かかったけど、さすがにこの時間は少し肌寒い。
一昨日と同じように遠くからヒグラシの声と、吹奏楽部の練習の音が聞こえてくる。
当然だけどこんな時間屋上には誰もいなくて、私と折坂くん二人だけの影が地面に長く伸びていた。
折坂孝平
折坂孝平
昼間の話の続きだけど……
金網に指を引っ掛けて、折坂くんはそこから見えるグラウンドを見下ろしながら、おもむろに口を開いた。
私はハッとその後ろ姿を見つめる。
折坂孝平
折坂孝平
一昨日、長谷部に告白……したんだよな、俺
長谷部鈴
長谷部鈴
……うん
折坂孝平
折坂孝平
その時の俺……、どんな感じだった?
長谷部鈴
長谷部鈴
どんな……って
折坂孝平
折坂孝平
普段の俺と、同じだった?
くるりと体をこちらに向き直らせ、折坂くんはガシャッと金網に背中を預けた。
こちらを向いた顔は、やっぱりどこか不安そうに見える。
私は首を傾げながら、あの日のことをぼんやりと思い返した。

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