第10話

第二章 別人?-3
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2018/11/07 01:54
折坂孝平
折坂孝平
────何?
廊下の方向に向いていた体をこちらに向けながら、折坂くんはどこか警戒するような声色でそう聞いてきた。
夕陽に赤く焼ける彼の顔が真っ直ぐにこちらを向いて、私の胸はドキッと大きく弾む。
うわ、ヤバい……。
とっさに呼び止めてしまった……。
長谷部鈴
長谷部鈴
えっと……。その……
どう切り出そうかと、思わず彼から目を逸らして指をもじもじさせる。
どうしよう……。
今の私の正直な気持ち、そのまま折坂くんに伝えてみようか。
付き合うとかはまだ全然考えられないけど、友達から始めてみたい…って。
長谷部鈴
長谷部鈴
あ、あの……ね
折坂孝平
折坂孝平
うん
長谷部鈴
長谷部鈴
昨日の告白の……返事なんだけど
意を決して、キッと顔を上げる。
目が合った瞬間、折坂くんはハッキリと大きく目を見張った。
長谷部鈴
長谷部鈴
あれから色々考えたんだけど……。私、折坂くんのことほとんど知らないから、やっぱりまだ付き合うとか考えらんなくて……。───だから。……だからね
折坂孝平
折坂孝平
────ちょっと待って
途切れがちに紡いでいた言葉を食い気味に遮られて、私はとっさに口を噤んだ。
折坂くんの顔が心なしか険しくなっているような気がして、私はドキリとする。
よほど驚いたのか、彼の瞳は激しく揺れていた。
折坂孝平
折坂孝平
何の話してんの?
長谷部鈴
長谷部鈴
……え?
問われて、私はぼんやりと折坂くんの顔を見つめ返した。
長谷部鈴
長谷部鈴
な、何って……。昨日折坂くん、告白してくれたよね? 付き合ってください……って
折坂孝平
折坂孝平
いや、知らないけど……
長谷部鈴
長谷部鈴
────え
折坂孝平
折坂孝平
俺、告白なんてしてねーよ
若干声には動揺が滲んでいたけど、折坂くんはハッキリとそう言った。
何を言っているのかわからなくて、私はただただ折坂くんの口元を見つめる。

……え、だって。
昨日、折坂くん。
私のこと好きだ……って。
言ってくれたよね?
なのに、なんで?
なんで今日は、知らないなんて言うの……?

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