一度フェイクを入れて、それに引っかかった敵にニヤリと笑いスリーポイントシュートを放つ。
綺麗な回転がかかったボールは、危なげなくゴールネットをくぐった。
「ちぇ、ナイッシュー」
「ふふー勝った」
私を守っていた敵――るーちゃんと片手でハイタッチを交わす。
これも全部、二宮先輩のおかげだ。
「集合ー!!」
キャプテンの声が響いた。時間的に、今日の練習はこれで終わりなのだろう。
「「「ハイ!!」」」
他の部員と返事が重なる。私はるーちゃんと一緒に、キャプテンの元へ走った。
□■□
片付けを終え、体育倉庫を出ようとした時だった。
「あ、高崎さん!」
聞き覚えのない声がした。
誰だろう……と思いながら振り返る。そこにいたのは、話したことのない男バスの一年生だった。
名前わかんないなぁ……相手は私の名前知ってるみたいだけど。
「ん?何?」
「えっと、その……オレ、高崎さんのことが好きで!」
「え」
体がピシッと硬直した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。