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第1話

プロローグ
3,035
2018/05/25 16:06
「あっ」

ガンッ、とボールがリングに当たり、全く別方向へ弾き出される。

女子バスケ部一年、高崎(たかさき)光(ひかり)。最近絶不調です……。

「もー……なんで入んないの」

ため息をつきながらボールを拾いに行く。

その時、ボールが目の前で誰かの手によって拾われた。

顔を上げれば――。

「朝早くから自主練か。いいことだ」

「……二宮(にのみや)先輩」

少し微笑む先輩は、ん、と私にボールを差し出してくれた。

「あ、ありがとうございます」

あまり話したことがないため、緊張しつつボールに手を伸ばす。すると、触れるまであと数ミリというところでボールが遠のき、私の手はスカッと空を切った。

体が前のめりになり、慌てて体勢を立て直す。そんな私を見て、先輩がフッと笑った……気がした。

いや、見間違いかもしれない。先輩はそういう、人を笑うようなことしないし……。多分。あれ、でも先輩がさっき私からボールを遠ざけた……よね?

「高崎」

「は、はい」

二宮先輩がわずかに口角を上げて言った。

「お前、今日部活終わったら居残りな」


…………え。

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