第12話

ヘンゼルと狂気 1-②
85
2019/01/27 02:17
グレーテル
なんだ、簡単ですね。
コウ
そうですか?
グレーテル
だってもう2人殺して
しまいました。






グレーテルは母と父の亡骸を見た。















何回も、凶器で突き刺された両親の亡骸を。









コウ
………。
コウ
それなら、もっと使いやすい
武器をどうぞ!
グレーテル
なに、これ…?







グレーテルはコウから受けった武器をまじまじと見つめた。













白を基調に、柄の根元には可愛らしい輪っかのついた、












すてきな剣。
















兄様に見せたら喜んでくれるだろうか。










兄様は昔から兵士になりたいと言っていたもの。



















コウ
もう、理解していますよね?
コウ
登場人物を全員殺せば、
『物語の未完結』が実現
します。
グレーテル
分かっています。
グレーテル
さあ、兄様。
グレーテル
行きましょうか。
グレーテル
一緒に散歩に出かけましょう。














はあ…













と溜息をついたコウは、分厚い本を取り出して

グレーテルに渡した。















表紙には、『Hansel and Gretel』と書かれていた。










グレーテル
………?
コウ
登場人物を殺すと、この本に
絵が描かれるんです!
グレーテル
へえ…。
グレーテル
さあ兄様、ケーキ食べてから
散歩にしましょう。
コウ
…それでは!











聞いてられない、という顔をしてコウは消えた。





































____________________________




































グレーテル
兄様…見てください。
グレーテル
素敵な死骸ですね。









透明なガラスの箱に兄の首を入れ、グレーテルは
椅子に座っていた。


















作ったケーキをえぐった母と父の目で飾り、

テーブルにはバラバラにした両親の体を置き、










グレーテルはその虚ろな目で兄を見つめていた。











グレーテル
兄様…
グレーテル
出かけましょうか。







グレーテルは家を出た。














家の前には暗い森が広がっている。

















森の奥には、民家の灯りが見えた。












グレーテル
あそこなら…
グレーテル
たくさん人がいますよね、兄様。








グレーテルは笑顔で箱の中の兄に話しかけた。















もちろん、返事は無い。
















知らずか、グレーテルは話し続ける。













グレーテル
殺して、殺して、殺して、
殺して、殺して、殺して、
殺して、殺して、殺して、
殺して、殺して、殺して、
殺して、殺して、殺して、
殺して、殺しましょう?
.




















グレーテル
愛しの兄様。

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