どうすべきか考えあぐねていると、伊織から電話が入った。
納豆同好会参謀部のことは、過去最高の頼りがいを発揮している伊織に任せることにする。
× × ×
伊織に任せた結果、今日はオリエンテーション終了後に生徒会室に向うことになった。
伊織のまともスイッチは金剛地さんが関わると入るようだ。クラスでの伊織はいつも通りの危険なヤツ。
そういえば、金剛地さんってどのクラスに所属してるんだろう。もしもオリエンテーションで会ったら……会ったら……。
口先の語彙力が死んで、私はこれ以上ないほどリア充から遠ざかることだろう。
いや、既に手遅れだ。取り返しがつかないところまで来ている。
× × ×
結局、オリエンテーションで金剛地さんに会うことはなかった。
HR終了後、伊織と二人で生徒会室へ向う。生徒会室を前にした伊織は鬼気迫る表情だ。ちょっと怖い。
生徒会室にて、金剛地さんはパイプ椅子に座り、納豆作りの歴史の本を読んでいた。
なぜ納豆ガチ勢が生徒会室を貸し切りにしているのか。そもそも何の話をしているのか。
そんな疑問が浮かんだが、金剛地さんの美貌と美声で私の口先の語彙力は死亡していることだろう。
現状、足はぷるぷる震えながらも、なんとか直立を保っている。これ、昨日より悪化してない?
え、金剛地さんって先輩だったの?っていうか生徒会長だったの?
貫禄はあるけどなんか変だから、私と同じく高校生活の初手をミスった一年生だと思ってた。
さすがオタななじみ。語彙力喪失した私をスルーして話を続けることをすぐに学習したようだ。それどころか私にもわかるように話を繋げてくれた。
それにしても伊織は、金剛地さん改め金剛地先輩が絡むとまともな言動しかしなくなるよね。もういっそ金剛地先輩と組んだ方が良いんじゃない?
そんなことを考えていたら、私は伊織によって生徒会室の外へ引っ張り出された。
金剛地先輩という枷が外れた途端、伊織はいつもの伊織に戻ってしまった。
私は語彙力が戻るから良いとしても、伊織には常備用金剛地先輩を渡したい気分になった。
そんなもの、持ってないけど。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!