「え、本当に?」
「はい。俺も好きです」
「嬉しい。ありがとうございます」
願っても無い良い返事に紗里奈は涙を浮かべると、男性の隣に座りべったりと体を引っ付けた。
幸せな心地で、彼以外何も見えなかった。
だが数分後、紗里奈は突然冷静になった。
先ほどの一連の行動の異様さに気付いたのだ。
我ながら何をやっているのだろう。
あまりに軽率すぎる。
運命の出会いだなんて舞い上がってしまった自分が恥ずかしかった。
それから、改めて隣で満足そうに微笑んでいる男性を見た。
地味でパッとしない印象の彼は、よく見ると全く好みではなかった。
不意に興ざめした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。