第3話

3 発見
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2018/10/09 13:16
 ドアを開けた大輝が見たのは、振り付けの確認をしている真奈と菜美だった。気がついた真奈がCDを止める。
内田 真奈
すみません……明日が本番なので……
 詫びる真奈に大輝は構いませんよ、と答えドアの近くに立つ。
笹野 菜美
事務所へ行くのはダメなんですよね?もちろん
    諦めたような口調で尋ねる菜美に
梶田 大輝
まぁできれば。でももし行かれるなら部下をつける、ということになります
 大輝ははっきりと答える。密かに後をつけて、あとでお咎めを受けるよりはずっとましだ。
笹野 菜美
ついてくるのは別にいいですよ。その刑事さんが秘密主義の人なら。
 挑戦的に言う菜美を、真奈が咎めるように見た。
梶田 大輝
じゃあさっきの部下をつけましょう。田村って奴ですが、俺が保証します。あいつなら口は固い
 大輝が提案し、菜美は少し驚いた顔で大輝を見つめる。普段の顔が無駄にチャラい田村は信じられないということか。まあ地毛は茶色いし肌も浅黒い、さらに割と童顔という3点セットの持ち主の彼だ。誠実さが外見に表れないのは彼の欠点なのかもしれない。
内田 真奈
私ここに残る。菜美が説明聴いてきて
 しばらくの沈黙の後、真奈が唐突に言った。いいんですか?  と尋ねる大輝に菜美は
笹野 菜美
まぁ大丈夫ですよ、真奈なら信頼あるし。1人くらいここにいた方が刑事さんも楽でしょ
と答えた。
 やがて田村が帰ってきて、すぐに菜美とともに出て行った。
 因みにコンビニのカメラには、10時4分に出て行く真奈が映っていた。さらに店員の1人は真奈の顔を覚えていて、9時前からコンビニの前で誰かと電話していたことを証言した。コンビニからここまで徒歩で10分ほどかかることを踏まえると、真奈のアリバイは完璧である。
──怪しいのは笹野 菜美か……。
 考えながら大輝はあることに気がついた。暖房が付いていないのである。その割に部屋は暖かく、現に今まで付いていないことに気がついていなかった。
 そのことを真奈に伝えると、真奈は慌ててエアコンのスイッチを入れる。本人も気がついていなかったようで、不思議そうな顔をしていた。
 それからしばらくして突然、真奈が大輝に声をかけた。
内田 真奈
あの、出かけるんですけど、ついてきてもらえませんか
 大輝は振り返る。他の人ではダメなのか、と聞くと真奈は首を振った。



 仕方なく大輝は雪の中、真奈とともに外に出る。行き先を告げず、真奈は大輝の隣を歩いた。おかげで大輝は、道を間違えるたびに真奈に引っ張られることになる。
 10分も歩いただろうか、辿り着いたのは公園だった。真奈は大きな木の裏に大輝を案内する。そこにあったものを見て、大輝は言葉を失った。

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