……に……………………………………い…………………
誰かの声が聞こえる。
俺は死んだはず……。
「あっ、目覚ました?」
誰かが近付いてくる。
目の前が真っ黒だ。
「ユウトっていうだよね。僕はロクだよ。君は視力を失ったんだよ。あのまま放っておこうと思ったんだけどさ、君使えそうだからクロには秘密で生き返らせたんだよ。」
知らない声に知らない場所。
ここはベットの上だろう。
身体中が痛い。
これでは逃げる事は出来ない。
『俺をどうするつもりだ?』
視力を失ったのか…。
これじゃ、一人で逃げること出来ないな。
それに、俺はもうこの世界を守ることが出来ない……。
「特に何もしないけど…外にはもう出ることは出来ない。クロにバレたらもう一度殺されたゃうからね。そしたら、もう生き返らせることは出来ないよ。一人一回なんだよ」
そうなのか。
なら、外に出よう。
俺は皆を守る為だけに生きて来た。
それが出来ならもう……
死んだ方がましだ。
『なら、俺は外に出る』
俺は周りに手を伸ばし、何があるのか確かめた。
何も無さそうだ。
足を地面に付けると、ゆっくりと歩き始めた。
身体中が痛い。
でも、そんなことどうでもいいんだ。
扉は何処だ?
壁に手を滑らせながら探した。
そろそろ一周する頃だろうか?
扉は全然見つからない。
「つまんない、もういいや。死にたいなら、窓から飛び降りなよ。世界がどうなっても良いならさ…」
ロクは呆れたような声で言った。
『もう俺は戦えない。何も見えないんだ。』
「いいよ、視力を半分あげる。そのかわりに面白いもの見せてよ。」
『いい。俺には救うことが出来ない。俺は弱い』
ユウトからは光が見えなくなっていた。
「へぇー、逃げるんだ。最低だね」
『好きなだけ言えばいい。窓はどこだ?』
「本当にいいんだね?窓まで連れてくよ?」
『あー、頼む』
「ハァー、本当につまんないや!ユウト、君を使ってもいい?」
『何にだ?』
「世界破壊にだよ。ユウトにも協力してもらうよ」
そう言い、ロクは俺の腕を引っ張っていった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!