『やっぱりお前が…!』
そう男の子は呟くと、攻撃をしに私の方へ向かってきた。
私は一度攻撃を受けることした。
どれ程強いのか知りたいからだ。
どんなに強い攻撃でも、私は死なない…。
その時だ!
『やーめた!お前は嘘つきだ!僕は見てたよ!おじいちゃんを殺したのはさっきの奴だ!』
そう言うと、男の子は急に立ち止まった。
『そうだな。おじいちゃんを殺したのはピエロだ!だが、それを命令したのは誰だろうなぁ?』
私はニヤッと口角を上げた。
早く攻撃をしろ!
どれ程強いのか見せろ!
『そうなんだ!じゃあ、ありがとう!』
男の子は笑っていた。
私には意味が分からなかった。
『あれ?驚いた顔してるね。ていうか、藍って騙されやすいね!僕さ、さっきから笑ってたよ?全然、僕の顔見てなかったでしょ?今までの全部演技だったんだー。おじいちゃん邪魔だったから消えてくれて良かったんだ!だからありがとう!』
確かに私は、男の子の表情を全然見てなかった。
でも、今のは言わない方が良かったと思うなぁ。
さっきまで殺したくないと思ってたのに…。
こいつを殺しても罪悪感は残らないだろう。
こんな最低な奴はこの世界に居らない…!
『そうだったのか。じゃあ、死ね!』
そう言って、私は男の子を身動き出来なくした。
そして、調べ上げた。
『お前はいぶき、六歳。へぇー、両親って事故で死んだんだー。おばちゃんは……自殺か。おじいちゃん…病気で死亡?……はぁ!?』
意味がわからない。
おじいちゃんならそこに居るじゃないか。
『そうなんだ…僕の家族はもう居ないんだ…。全部話してあげる!僕は誘拐されたんだ。一歳のとき、あのおじいちゃんに。僕がその真実を知ったのは六歳の誕生日の日だった。ある書類を見つけたんだ。僕のことについて沢山書いてあった。僕は"偽物の名前"で六歳の誕生日まで生きてきた。ひろき、そう呼ばれてきた。でも、本当は真城いぶきなんだ。僕は幼稚園も保育園も行けなかった。そして、小学校の入学式の日も行けなかった。その日だった。こんなことが起きたのは!僕は本当はただの人間だ…。魔王and殺人ピエロ討伐隊じゃない。嘘ついてごめんなさい…』
男の子は反省しているような表情だった。
『おじいちゃんに消えて欲しいかったのは真実か?』
『違うよ!本当は今までの演技じゃなかったんだ!』
『それは本当か?』
一度、騙されたんだ。
そう簡単には信用出来ない。
『あーもういいや!本当は演技だ!おじいちゃんなんて……!』
男の子の目から透明なものが流れていた。
『演技じゃないんだな?』
私はもう一度だけ聞いた。
『演技だ!おじいちゃんなんて居なくなればいい!』
私には男の子の心情が理解出来なかった。
どうして嘘をつくのか?
『おじいちゃんは僕のおばあちゃんを殺した…。自殺なんかじゃない!だから、僕はおじいちゃんを憎まなきゃならないんだ!でも、ずっと一緒にいたから……』
『憎めないのだろう?なら、いいじゃないか!最後に聞く!おじいちゃんを殺した我が本当は憎いんだよな?』
答えは何となく予想できる。
『憎い…本当はとても憎い!』
予想通りだ。
『そうだ!本心を隠すな!我を殺しにこい!命を掛けて戦うんだ!それが嫌なら逃げろ!』
私は身動きを出来るようにした。
もし、逃げないなら私は容赦はしない。
全力で戦う!
『逃げない!』
『そうか!命を掛けれるのか?死ぬかもしれないぞ!』
『掛けれる!おじいちゃんの為なら!』
私はそれを聞いた瞬間…思った!
私はなんの為にこんな事をしているんだ?
契約のせいで世界破壊をしなきゃならないなら、その契約をやめれば良いだけだ。
でも、そんなことは可能なのか?
そもそも、契約者の顔も居場所も分からない。
その時だ!
ある会話が聞こえた。
八百メートルぐらいは離れているだろう。
『あの瓶は何処だ?』
『早く見つけないと魔王ってやつに取られちゃいますよー!』
その会話を聞いて思い出した。
私は今まで瓶の存在を忘れていた。
こんな事をしてる場合じゃない!
早く瓶を見つけ出さないと…!!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!