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第1話

届いていますか?
860
2018/10/07 11:09
私は、鯨野碧衣。高校1年生。
目付きが悪いとよく言われる。そして学校では
「雪女」と噂されている。「鯨野の目を見たら
凍る」という噂がその噂を作ったのだろう。
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
にしても、今日はついてないなぁ
今私は、学校の裏庭の草むしりをしている。
朝、ちょっとしたトラブルで
遅刻してしまったのだ。
それで罰として草むしり。
噂のせいか、一緒に草むしりをしてくれる
友達もおらず、この状況になっている。
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
ハァ...
早く終わらせて、家に帰ろう...
鮫島 梓
鮫島 梓
どうしたの?ため息なんか
ついちゃって
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
...⁉
鮫島 梓
鮫島 梓
草むしり、手伝おうか?
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
あ、ありがとう。鮫島君。
でも、1人でやるからいいよ。
この人は、クラスメイトの鮫島梓。
社交的で成績優秀。おまけに、運動神経がいい。
性格も面白くてしっかりしていて優しい。
だから、女子、男子、先生問わず人気が高い。
鮫島 梓
鮫島 梓
俺の名前、知ってるんだ!
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
同じクラスじゃん。
鮫島 梓
鮫島 梓
ハハッ
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
そこ、笑うところじゃない。
鮫島 梓
鮫島 梓
だって、面白いんだもん。鯨野さん。
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
どこが?
鮫島 梓
鮫島 梓
分かんない。
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
フフッ...なんだよそれ
鮫島 梓
鮫島 梓
あ...笑った...
とっさに顔を隠す。笑ったのはいつぶりだろうか。
不思議。鮫島君といると楽しい。
鮫島 梓
鮫島 梓
あー!隠さないでよー!
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
やだ。
鮫島 梓
鮫島 梓
鯨野さんの笑顔、貴重なのに...!
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
貴重ってなんだよ。貴重って。
鮫島 梓
鮫島 梓
だって鯨野さん、笑わないもん。
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
笑わなくて悪かったね
鮫島 梓
鮫島 梓
あ!でも...
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
鮫島 梓
鮫島 梓
今朝、笑ってた!
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
今朝...?
なんのことだろう。私には今朝、
笑った覚えがない。
鮫島 梓
鮫島 梓
ほら!あれ!
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
あれ...?
鮫島 梓
鮫島 梓
道端で倒れたお婆さん助けたとき!
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
何で知って...!
私が遅刻した理由。登校中に、お婆さんが
倒れているのを見つけて、病院まで送ってあげた
のだけど...
鮫島 梓
鮫島 梓
俺そのとき、いたんだよね。
俺は、お婆さんが倒れたの
気づかなかったのに鯨野さんは
気づいて、迷わず助けたから、
感動した。
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
な、何のことだか...
鮫島 梓
鮫島 梓
病院に行く前、苦しそうなお婆さんの
背中、苦しくなくなるまでさすって
くれてたし。
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
...
気づかなかった。あのとき、
鮫島君が近くにいたなんて。
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
でも私は、遅刻してしまった。
私は感動してもらうほど、
いいやつじゃない。
鮫島 梓
鮫島 梓
いいじゃん。別に。
遅刻した理由がそれなら、
なおさらね!
鮫島君はそう言って、にっこり笑った。
鮫島 梓
鮫島 梓
ということで!草むしり、手伝う!
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
ということでってどういうこと⁉
鮫島 梓
鮫島 梓
鯨野さんはクラスの皆が思ってるほど
悪い人じゃないってこと!
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
そうかな...
鮫島 梓
鮫島 梓
俺は、噂つかないから!
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
怪しい...
鮫島 梓
鮫島 梓
えー!
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
フフッ...分かったよ。信じる。
鮫島 梓
鮫島 梓
笑った!
また、とっさに顔を隠す。
鮫島 梓
鮫島 梓
あー!また!隠さないでー!
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
やだ。
鮫島 梓
鮫島 梓
えー!
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
フフッ
鮫島 梓
鮫島 梓
まぁでも、信じてくれてありがとう。
ありがとうと言われるのはいつぶりだろう。
こんなに楽しいのはいつぶりだろう。
私は呟く。こちらこそ、
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
ありがとう...
鮫島 梓
鮫島 梓
...何か言った?
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
何でもない。
鮫島 梓
鮫島 梓
えー!気になるー!
鯨野 碧衣
鯨野 碧衣
フフッ


















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