前の話
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『人生には必ず一度分岐点がある。例えば『結婚』なんかはその人にとって大きな選択であり、分岐点であると言えるだろう』
私は言われた通り着席し、ふと、外の景色に目をやる。
ーーーあ、桜…
私の分岐点は高校一年の春だった。
その日の帰り、雛子は親友の七海と人気の無い住宅地を歩いていた。何気ない会話を交わしながら路地を曲がろうとしたその時、ドンっという音がしたと同時に七海は尻餅をついてしまった。
相手がころんだのだから「すみません」とか「大丈夫ですか」とか言えばいいものをずっと立ち尽くしているから、雛子は相手に対し嫌悪感を抱き睨む様に上を見上げた。
が、それを後悔した時にはもう遅かった。
目の前にいたのは、今時珍しいろくに学校にも通ってなさそうな3人組の男達だった。何やらニヤニヤしながらこちらを舐める様に覗いてくる。…キモい。兎に角早くこの場から離れた方が身の為だと感じ、雛子は七海に声を掛ける。
言い終わる前に男は七海に飛びついた。七海は咄嗟のことで足がすくんでしまっていた。もう終わりだ…目をぎゅっと瞑って痛みを待つが何も起きない。七海が恐る恐る目を開けると、襲い掛かってきた男は地面でピクピク痙攣していた。
「な、何すんだてめぇ!!」
「オラァァァ!!」
今度は2人掛かりで襲ってきた。だが、何故か雛子が私を守る様にして立っている。
「雛子危ない!!」
七海が言い切る前に、男の一人が雛子に両腕を掴まれぐるんと投げられて地面に叩きつけられる。仕舞いには鳩尾に強烈な蹴りを喰らいKO。もう一人は腹に蹴りを喰らった後電柱に頭を強打し動かなくなった。
雛子は意識が朦朧としているリーダーらしき男に冷たく吐き捨てる様に言った。
一部始終を見ていた七海は唖然としていた。雛子はなんと説明しようか躊躇っていた。絶対に七海に引かれてしまった、そう諦めつつも七海に声を掛ける。
思っていた以上に引かれていない事が確認できた雛子はほっと息を吐いたのだった。
これはまだ始まる前の物語。彼らとの出会いによって雛子の人生は大きく変わっていくことはまだ誰も知らない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。