「はよっ」
火曜の朝、あたしより先に教室に来ていた陽向に声をかける。
「おー、はよ。
もー大丈夫なのか?」
「まぁ、うん。」
今朝測ったら36度台だった。
あたしの平熱は35度台だからちょっと高いんだけど、まぁ大丈夫っしょ。
若干咳が出るからマスクはしてる。
「陽向、朝練は?」
いつもこの時間、サッカー部は朝練してんのに…
「今日朝練ねぇの。
すっかり忘れて早く来ちまった。」
「あれまぁ、それはごしゅーしょーさま。」
あたしも時々やるわー…
まぁ冬は毎日朝練なしだから間違えることは無いけど。
「そーだ、今日特別日課なんだけど、分かってる?」
「あー、昨日の封筒に入れといてくれただろ、予定。
だから大丈夫。
お見舞いもサンキューな。」
昨日貰った封筒の中には学校からの配布物だけじゃなくて、陽向が書いてくれたらしい予定のメモが入っていた。
あれがなかったら忘れ物するとこだった…
なんせ普段の授業なら無いはずの実習が今日あるんだから。
ほかの教科書とかなら借りられても体操着は汚すかもしんないし借りるわけにわねぇ…
「おはよー
お、あなた!」
康輔がドアを開けて入ってくる。
「よっ!」
「元気そーじゃん。」
「おかげさまで。
昨日はありがとなっ」
「どー致しましてっ。」
にっと笑う。
「あっ、そーだっ!」
何かを思い出したように突然声を上げる康輔。
あたしは肩を掴まれそのまま教室の隅まで連れてかれる。
「な、なんだよ…?」
「昨日佐伯あなたのとこ戻った時にオレのことなんか、言ってた?」
内緒話をするように手を口元に当てて声を潜めて言う。
「…いや?別に。」
聞いた途端康輔はほっとしたように肩を下ろした。
「良かったぁ…」
そう言いながら自分の席に戻っていく。
昨日佐伯が言ってたのは康輔の事じゃなくて陽向の事だったけど…
なんなんだ…?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。