あちゃー…
ポツ、ポツとコンクリートに黒い斑点ができ、あっという間にザンザンぶりになった。
雨…さっきまで降ってなかったじゃん…
部室で着替えてみっちゃんと別れてから忘れ物に気づいて教室に戻ったすきにこの雨…
みっちゃんと一緒に帰ってれば…
今日傘持ってきてねぇ…
「あ、あなた」
昇降口でどーするか悩んでいると、陽向が下駄箱の方から出てきた。
「おー、お疲れー…」
「うっそ、雨降ってんじゃん…」
「今降ってきたんだよ…」
まじかー、と腰に手を当てる陽向。
「やべ、傘もってくんの忘れたー…」
「あたしも。」
この調子じゃ、帰れそうにない…
2人で並んで雨宿り。
話すことも無くなって、沈黙が続く。
なにか…
話題…
「そーいや、」
陽向が空を仰ぎながら言う。
「したのか、デート。」
「へっ!?」
デート…?
「昨日。
康輔と。」
陽向の耳にも入って…!?
「いや、あれはデートじゃなくて!
あたしはそんな気ないし、康輔も冗談だって言ってたし!
そもそもあれは見舞いに来てくれたお礼だし!!」
両手を振りながら説明する。
あれ、なんでこんな言い訳してんだあたし。
いつもなら軽くあしらえるのに。
なんでー…
「はは、必死すぎだろっ」
…笑われた…
「オレとはしてくれねぇの?
デート」
はっ!?
「だ、誰がするかっ!!!」
顔が赤くなるのが感じとれる。
「オレも見舞い行ったのになー…」
「そ、れはそーだけど…
つかあれもデートじゃねぇ!」
なんでだろう…
「ムキになるなよなー」
呑気な陽向とは対照的なあたし。
なんであたしは…
陽向といると冷静になれないんだろう…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。