第21話

変な感じ
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2019/01/03 05:08
康輔と教室に着いて別れてからあたしは数学の予習に取り掛かっていた。


だってさっき康輔から聞いたんだし!!!


はぁー、終わるかな?


「あなたが朝勉なんて珍しー…

すげーじゃん。」


上から声がして見上げると目の前には陽向の顔。


ち…っか…!


「ひ…なた…」


「はよ。」


ドサッと机にカバンを置くと同時に椅子に座る。


「お、はよ。」


びっくりして不自然な挨拶。


顔が熱い。


「インフル治ったんだな」


「ま、まぁ、一応…」


あたしはノートに目を落としたまま話す。


無理、陽向の方向けねぇ…


「なぁ、今日の放課後って、陽向部活だよな…?」


気を紛らわせようと話を続ける。


「あぁ。」


そう言われ、ホッとしたような少し残念なような、よく分からない気持ちになった。


じゃあ陽向には他にお礼するとして、あとは佐伯だな。


キーンコーンカーンコーン。


本鈴が鳴って授業が始まる。


1時限目は英語。


だがしかし!


あたしはまだ数学が終わってねーんだ!!


次の次までに終わらせねぇと…!


正四面体ABCDにおいて△BCDの重心をGとすると、AG垂直BCであることをベクトルを用いて答えよ…?


あたし空間ベクトルなんてしらねぇーし!!!


数学の教科書をパラパラめくりながら解き方を探す。


もー…わけわかんね。


「Let's see…then, Ms あなた!」


「えっ、は、はいっ…!」


名前を呼ばれて慌てて返事をする。


やべ〜…


英語聞いてなかった…


「今のとこ、訳して貰いましょうか」


や、訳!?


どこの!?


どーしよ…


あたしが焦りながら机の上の教科書をめくっていると、トントン、と陽向がシャーペンで自分のノートを叩いてみせた。


そのノートを見ると付箋がはられていて“ここ↓”と書かれている。


あたしは日本語訳をそこまま読上げた。


「わ、私は彼女が欠点を持っているので、それだけ一層彼女が好きだ。」


「Yes, ok!

そうですね、ここは…」


た、助かった…


「サンキュ、陽向。」


小声で伝える。



「おう。」


ふっと笑うその表情が優しくてなんだか胸が詰まった。

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