第13話

雪の日
811
2018/12/29 08:02
「うぅ、寒っ…

なーりん、もう帰ろーよ」


「えぇー!

まだ雪だるま完成してないもん!」


「こんな少ない雪じゃまだおっきいのは作れないよ?」


「いーの!」


いーの、ってねぇ…


あたし風邪ひきそうなんですけど…


日曜日、朝から雪が降ってうっすらながら雪が積もった。


今年はなかなか降らなかったからようやくかって感じ。


6歳の妹の凛が雪を見て公園に行きたいと言い出したので、お昼ご飯を食べて公園に連れていった。


あたしはベンチの雪を払って座り、凛が遊んでいる様子を見守る。


なんで小さい子ってあんなに雪で喜べるんだ…。


絶対こたつでゴロゴロしてた方があったかいのに…。


「おねぇーちゃんも作ろーよ!」


遠くで凛があたしに向かって手招きする。


「しゃーないなぁ…」


んしょ、と腰を上げ、凛の方に歩いてく。


「見てー、ちっちゃいのできた!」


手のひらにのせた2つの雪玉を合わせて見せる。


でもそれじゃただの雪玉…


「あはは、顔はー?」


「あっ、そっか!

おねーちゃんちょっと持っててー」


あたしに顔のついていない雪だるまを渡し、足元を掘る凛。


冷て〜…


手袋持ってくればよかったな…


チリンチリン。


その時、公園の入口の方から音がして振り返る。


「あ、えっ、陽向!?」


あたしは驚いて名前を呼ぶ。


そこにいたのは自転車に股がっている陽向だった。


「よっ!」


「あっ陽向くん!」


そう言って凛は手を止め、陽向の元に駆け寄った。


「おー、凛か。

久しぶりだなっ。」


頭を撫でられ、嬉しそうにする凛。


何を隠そう、凛は陽向のことが大好きなのだ。


建築科では年に3回、販売会を行う。


実習の時間に木材で作った椅子やテーブル、おもちゃなんかも販売する。


凛はお母さんと一緒によく買いに来て、建築科の生徒達ほぼみんなと知り合いになった。


その中でも陽向にはよく懐く。


なんであんなのがいいんだろうねぇ…


「陽向、雪の中自転車で何してんだ?」


あたしも2人の方に向かう。


「あぁー、母さんに買い物頼まれてよ。

割と重いもんばっか言うからチャリの方がいいかと思って。」


「へぇー、転ばないようにな?」


「おーよ。」


「ねぇねぇ陽向くんっ、遊ぼー?」


凛が陽向のジャンバーの裾を引っ張って言う。


「凛っ」


こんな寒い中で付き合わせられないって…!


「あー、じゃあちょっとだけ、な?」


「やったぁ!」

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