「うぅ、寒っ…
なー凛、もう帰ろーよ」
「えぇー!
まだ雪だるま完成してないもん!」
「こんな少ない雪じゃまだおっきいのは作れないよ?」
「いーの!」
いーの、ってねぇ…
あたし風邪ひきそうなんですけど…
日曜日、朝から雪が降ってうっすらながら雪が積もった。
今年はなかなか降らなかったからようやくかって感じ。
6歳の妹の凛が雪を見て公園に行きたいと言い出したので、お昼ご飯を食べて公園に連れていった。
あたしはベンチの雪を払って座り、凛が遊んでいる様子を見守る。
なんで小さい子ってあんなに雪で喜べるんだ…。
絶対こたつでゴロゴロしてた方があったかいのに…。
「おねぇーちゃんも作ろーよ!」
遠くで凛があたしに向かって手招きする。
「しゃーないなぁ…」
んしょ、と腰を上げ、凛の方に歩いてく。
「見てー、ちっちゃいのできた!」
手のひらにのせた2つの雪玉を合わせて見せる。
でもそれじゃただの雪玉…
「あはは、顔はー?」
「あっ、そっか!
おねーちゃんちょっと持っててー」
あたしに顔のついていない雪だるまを渡し、足元を掘る凛。
冷て〜…
手袋持ってくればよかったな…
チリンチリン。
その時、公園の入口の方から音がして振り返る。
「あ、えっ、陽向!?」
あたしは驚いて名前を呼ぶ。
そこにいたのは自転車に股がっている陽向だった。
「よっ!」
「あっ陽向くん!」
そう言って凛は手を止め、陽向の元に駆け寄った。
「おー、凛か。
久しぶりだなっ。」
頭を撫でられ、嬉しそうにする凛。
何を隠そう、凛は陽向のことが大好きなのだ。
建築科では年に3回、販売会を行う。
実習の時間に木材で作った椅子やテーブル、おもちゃなんかも販売する。
凛はお母さんと一緒によく買いに来て、建築科の生徒達ほぼみんなと知り合いになった。
その中でも陽向にはよく懐く。
なんであんなのがいいんだろうねぇ…
「陽向、雪の中自転車で何してんだ?」
あたしも2人の方に向かう。
「あぁー、母さんに買い物頼まれてよ。
割と重いもんばっか言うからチャリの方がいいかと思って。」
「へぇー、転ばないようにな?」
「おーよ。」
「ねぇねぇ陽向くんっ、遊ぼー?」
凛が陽向のジャンバーの裾を引っ張って言う。
「凛っ」
こんな寒い中で付き合わせられないって…!
「あー、じゃあちょっとだけ、な?」
「やったぁ!」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。